SS2

□Are you happy?
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ひんやりした屋上の地が心地良くて、瞼を閉じた。風の音が聞こえる。
さわさわ。さわさわ。
ふと脳内にあいつの笑顔が浮かんだ。あいつはあいつ。


「(なんで宇海?)」


目を開けて身体を起こす。空を仰げば太陽が視界に入った。まぶしくて、目を細めた。
太陽はまだあんなに高い。きっとまだ授業中だろうな。
欠伸を1つ漏らせば、後ろから声が聞こえた。


「がーいくんっ」
「…宇海」


輝かしい笑顔でそこに宇海が立っていた。


「お前授業は…」
「涯くんが見えたから抜けてきた!」
「俺寝てたんだぞ俺が見えるわけないだろ」
「うん、勘だよ。涯くんならここにいると思って」
「…馬鹿か」


にこりと微笑んで、横に座る宇海。
俺は視線を宇海からグラウンドへ移した。体育の授業だろう男子生徒たちがサッカーをしていた。
何が楽しいのか宇海は子供のように笑いながら俺に話しかける。


「涯くんいつからここにいたの?」
「3時間目の途中から」
「えー1時間も前じゃないか。誘ってくれれば良かったのに…」
「なんでだよ」
「一緒にいたいから!」
「俺と一緒にいたら周りの奴らに色々言われるぞ」


ちらりと宇海を見る。今まで笑顔だった宇海の顔から笑みが消えていた。


「何だよそれ」
「いや…俺みたいな孤立してる奴と一緒にいるとお前も孤立するだろ」
「涯くんと一緒にいたいから一緒にいるんだ」
「でも…」


悔しそうに、泣きそうな表情で俺に言う。


「涯くんと一緒にいられたら俺はそれで幸せだよ。それじゃダメなのか?」


大きな瞳で俺を見る宇海。
思わずまた宇海からグラウンドへ視線を移す。あ、ゴール外した。
隣で宇海が色々言ってるが、俺は全く聞いちゃいなかった。だってどうせくさい台詞吐いてるだけだ。


「涯くん聞いてるのか!?」
「あ?ああ…」
「本当かよ!」


無論生返事。


「じゃあ俺はさっき何言ってた?」
「え?………」
「ほら聞いてない」
「すまん…」


宇海はまたにこりと微笑んで。


「俺の幸せ分けてあげるって話!」
「…は?」
「俺は涯くんと一緒にいられればそれで幸せ。周りが何言おうと涯くんがいればいい」


こいつは…馬鹿なのか。


「俺が一緒にいて涯くんが幸せじゃないなら、それなら俺は涯くんに幸せ分けてあげる…!」


キーンコーンカーンコーン。
その時、授業の終わりを知らせるチャイムが構内に響き渡った。グラウンドの生徒達はまたサッカーをしていた。あ、ゴール決めた。


「…涯くん、食堂にご飯食べに行かない?」


恐る恐る宇海が尋ねる。俺は宇海を見て、それに答えた。


「うん、行こう」


宇海はここに来たときと同じくらいの輝かしい笑顔になった。
特別クラスなのに、校内1優秀なはずなのに、こいつは本当に馬鹿だ。…だけど、こいつが馬鹿でよかったと思う自分がいた。





Are you happy?

(あ、俺弁当だから)(えー俺の分は?)(手が滑ったー)(へぶっ…!!)


I am...?




(100624)

涯くん中学生なのにお弁当持参とかどうした。明日から宇海さんのお弁当も増えます。きゃー。

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