SS2
□友達以上恋人未満
1ページ/1ページ
教室の中は、夕焼けの赤で染まってた。昼間の暑さは少し和らいで、夏には珍しい涼しげな風が髪を揺らす。
1番後ろの席に俺が。俺の前の席にしげるが身体を横に出して座ってた。
居残り勉強。テストの点が悪かった為、プリント学習。しげるはそれに付き合ってくれている。
ちらりとしげるを見ると、しげるは本を読むのを中断して俺と目を合わせた。
「なに?」
「え、いや…なんでもない」
そう、と言ってまた本に目を戻す。その姿さえ絵になる男赤木しげる。
こんなに優しい奴なのに、他のクラスメイトとは滅多に話さない。俺と同じで孤立してる。…俺は意図的にだが。
「もっと話せばいいのに」
「え?」
「あっ悪い!本読んでてくれ」
「………」
しげるはパタンと本を閉じ、それを机の上に置いた。そして頬杖をつき、俺を見つめる。黒く澄んだ瞳から目がを放すことが出来なくなった。
「今のどーゆー意味?」
にやりと笑って聞かれた。
「なんでもないんだっ…気にしないでくれ」
「俺そんなに無口じゃないでしょ、結構話してるつもりなんだけど」
「……」
こいつも人の話を聞かない…どこぞの宇海馬鹿みたいだ。
観念して俺も口を開く。
「クラスの奴らとさ…もっと仲良くすればいいんじゃないかって思って」
「…なんだそんなことか」
「そんなことって…!」
つまらなそうに肩を落として、しげるは本を開いた。
読んでたページを探し始める。
「あんな平和ボケしてる人達と話なんか出来るわけが無い。こっちまでボケちまいそうだ…」
「そんな…!」
「涯は他の人達とは違うじゃない」
意味が分からない。俺だって他の奴らと同じだろうに。
「分かってないな。涯はいつでも周りを警戒してる」
「それは褒めてるのか?」
「好きなように捉えてよ」
「……けどお前、ずっと1人ってわけにもいかないだろ。クラスだって替わるし、進路だって同じわけじゃない」
先程と同じページを見つけてから、しげるはもう1度顔を上げて俺を見た。
「今は涯がいれば俺は他には何も入らないよ」
珍しくにこりと優しく微笑んだしげる。
その言葉とその笑顔を見れば、大抵の女子は堕ちるだろうな。
「それはどういう意味だ」
「涯の好きなように捉えればいいじゃない」
「…友達としてって意味でいいか?」
「じゃあそれでいいよ」
ふふ、と笑って、しげるは本を読むのを再開した。俺もプリントの問題を解くのを再開する。
外から蝉の鳴き声が聞こえた。もうすぐ夏休みだ。今年の夏は何をするかな。今年は、しげるもいるもんな。
友達以上恋人未満
(悪いけど、今のままが心地いいんだ)(そう、なら今のままでいいよ)
さっさと終わらせて、駄菓子屋行こう!
(100721)
涯くんの迷惑になることはしたくないので、曖昧に答えるしげる。自己主張強いしげるもすきだけど相手を想うしげるもすき。