SS2

□友達以上恋人未満
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教室の中は、夕焼けの赤で染まってた。昼間の暑さは少し和らいで、夏には珍しい涼しげな風が髪を揺らす。
1番後ろの席に俺が。俺の前の席にしげるが身体を横に出して座ってた。
居残り勉強。テストの点が悪かった為、プリント学習。しげるはそれに付き合ってくれている。
ちらりとしげるを見ると、しげるは本を読むのを中断して俺と目を合わせた。


「なに?」
「え、いや…なんでもない」


そう、と言ってまた本に目を戻す。その姿さえ絵になる男赤木しげる。
こんなに優しい奴なのに、他のクラスメイトとは滅多に話さない。俺と同じで孤立してる。…俺は意図的にだが。


「もっと話せばいいのに」
「え?」
「あっ悪い!本読んでてくれ」
「………」


しげるはパタンと本を閉じ、それを机の上に置いた。そして頬杖をつき、俺を見つめる。黒く澄んだ瞳から目がを放すことが出来なくなった。


「今のどーゆー意味?」


にやりと笑って聞かれた。


「なんでもないんだっ…気にしないでくれ」
「俺そんなに無口じゃないでしょ、結構話してるつもりなんだけど」
「……」


こいつも人の話を聞かない…どこぞの宇海馬鹿みたいだ。
観念して俺も口を開く。


「クラスの奴らとさ…もっと仲良くすればいいんじゃないかって思って」
「…なんだそんなことか」
「そんなことって…!」


つまらなそうに肩を落として、しげるは本を開いた。
読んでたページを探し始める。


「あんな平和ボケしてる人達と話なんか出来るわけが無い。こっちまでボケちまいそうだ…」
「そんな…!」
「涯は他の人達とは違うじゃない」


意味が分からない。俺だって他の奴らと同じだろうに。


「分かってないな。涯はいつでも周りを警戒してる」
「それは褒めてるのか?」
「好きなように捉えてよ」
「……けどお前、ずっと1人ってわけにもいかないだろ。クラスだって替わるし、進路だって同じわけじゃない」


先程と同じページを見つけてから、しげるはもう1度顔を上げて俺を見た。


「今は涯がいれば俺は他には何も入らないよ」


珍しくにこりと優しく微笑んだしげる。
その言葉とその笑顔を見れば、大抵の女子は堕ちるだろうな。


「それはどういう意味だ」
「涯の好きなように捉えればいいじゃない」
「…友達としてって意味でいいか?」
「じゃあそれでいいよ」


ふふ、と笑って、しげるは本を読むのを再開した。俺もプリントの問題を解くのを再開する。
外から蝉の鳴き声が聞こえた。もうすぐ夏休みだ。今年の夏は何をするかな。今年は、しげるもいるもんな。







(悪いけど、今のままが心地いいんだ)(そう、なら今のままでいいよ)

さっさと終わらせて、駄菓子屋行こう!






(100721)

涯くんの迷惑になることはしたくないので、曖昧に答えるしげる。自己主張強いしげるもすきだけど相手を想うしげるもすき。




 

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