SS2

□大嫌いな俺が大好きな君
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泣いて懇願するカイジさんは他のどんなものよりも可愛らしくて、その泣き顔は俺をより興奮させた。
殴って、蹴って、痛みつけて。
やがてカイジさんは懇願することを止めた。


「もうお願いしないの?頼む止めてくれってさ」
「このっ…悪魔…!」


涙を流して俺を睨むカイジさん。銃を突きつけてそれを見下ろしている俺。
上下関係は誰が見てもはっきりと分かる。
勝者と敗者。強者と弱者。殺す者と殺される者。
なぜだかこの人からは死ぬと言う気が感じられない。むしろぎりぎりになった時こそ生気が感じられる。


「そんなあなたの命乞いを見てみたかったんだけど」
「なにっ…」
「ダメダメなカイジさんの命乞いじゃなくて、覚醒したカイジさんの命乞いを見てみたいんだ」


トリガーに指をかける。
その些細な動作だけで緊張感が増した。


「カイジさん知ってる?トリガーに指をかけるのは銃を知らない素人だけなんだよ」
「…は…?」
「本当に撃つとき以外にはトリガーには指をかけない。暴発したりしたらいけないからね」
「………」
「…言ってる意味分かるでしょう?」


カイジさんの眉間に銃口を向けた。


「俺はそれだけ本気なんですよ」


歯を食いしばって俺を睨んでいたカイジさんは、口角を上げて状況にそぐわない不敵な面構えでにや…と笑った。
そして、ゆっくりと地についていた片方の手で俺の手首を掴む。その力はとてつもなく強かった。
だけど、決して何かが変わるわけでは無い。


「何のつもり?指はもうトリガーにかかってますよ?」
「お前こそ何のつもりで俺を殺そうとするんだ…!」
「…カイジさんのことが好きだから?」


同じようににやりと笑ってそう言うと、徐々に手首を掴んでいる力は強くなっていき、やがてカイジさんの爪が手首に食い込んだ。
ああもう痛いな。まあでもカイジさんなら許してあげるよ。
目を伏せてふふっと笑う。なぜかは分からないけど笑えたんだ。


「俺はお前なんて大嫌いだっ…!」


その言葉に目を開いてカイジさんを見た。
未だぼろぼろ泣いてる21歳。けれどどこか強気な瀬戸際の男。
俺の手首を掴んでいたその手を俺も掴んだ。大人の男の大きな手だ。俺もいつかはこんな風になれるんだろうか。


「嘘吐き」


俺のこと大好きなくせに。

にっと笑ってみせた。
あなたの俺を見る視線が他の人と違うなんてこと、知っていましたよ。それが恋だってことも。
あなたはすぐに表情に出るんだから。

カイジさんの顔から笑顔が消えた瞬間、発砲音が室内を埋め尽くした。






(あらら…倒れちゃった)

それはただの失神なのか、それとも死んだからなのか…?






(100726)

自意識過剰なしげる君。でも恋するカイジさんはちらちらしげるを見てると思うんだ。でもどうして好き=殺すになったんだろ。




 

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