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□Vous devrez etre a moi?
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付き合いたいわけじゃないんだ。
「涯くんと」
そう口にしたら、それを聞いた全ての人が目を丸くした。
「ふーん」しげるが言った。
「ならどうして工藤君のことが好きだと言ってるの?」ユウキが言った。
「まだ零も若いね」アカギさんが言った。
「お前は子供なんだよ」カイジさんが言った。
みんながみんな、興味無さそうに。けれどカイジさんだけは真剣な眼差しで俺に言った。
「零のそれはエゴなんだよ」
子供に叱る大人みたいな顔で。
大人面するなよニートのくせに。子供扱いするなよニートのくせに。
言ったら軽く殴られた。
「子供と同じ、涯って言う玩具を取られたくないだけだ」
違う。
「じゃあお前涯をどうしたいんだよ」
「………」
「愛じゃねぇんだよお前のは」
「でも俺は涯くんのことすきだし」
「だけどそれは愛じゃねぇ」
じゃあこの気持ちは何?
「涯くんをとられたくない。誰にも渡したくない。俺を見てほしい。他のものを見てほしくない。涯くん。涯くんに。俺を」
これは愛じゃないなら何なんだ?
「独占欲」
それは聞こえないくらい小さく。けれど聞こえるようにしっかりと言った。
カイジさんの一言一言が胸に突き刺さる。
「お前は涯をひとりじめしたいだけなんだって」
だって俺は涯くんのことを愛してるんだ。愛してるからひとりじめしたいんだ。これはエゴじゃない。愛だよ。愛なんだよ。
「愛じゃなかったら俺はどうすればいいんですか…」
泣きそうになると、無意識に唇を噛み締める癖が俺にはあるらしい。あ、なんかまた血の味がする。
俺の唇にカイジさんの指先が触れる。ひんやりしたカイジさんの体温。
「あんまり自分傷つけんなよ」
「涯くんのこと、すきなんですよっ…」
カイジさんの指先が離れる。
「でも涯くんと付き合いたいわけじゃない。涯くんとキスしたいわけじゃない。涯くんとSEXしたいわけじゃないんです」
「ああ…」
「ただ…一緒にいて…ほしいだけ」
だけど俺以外の奴と一緒にいると死にたくなる。
「俺おかしい…おかしいですよね…カイジさん、俺涯くんがすきなのに…」
ああ、鉄の匂いだ…。
「おかしくねぇよ、おかしくなんかねぇから、…涯を離せ」
…ああ、鉄の匂いは俺のじゃなかったんだ。
「だから零のそれはエゴなんだよ」
だって涯くんを他の誰にも渡したくなかったんだ。
Vous devrez etre a moi?
(そうだ、いっそのこと)(俺を君のものにしてくれない?)
(100927)
フランス語で「僕を君のものにしてくれないか」と言う意味です。
愛とエゴは違うらしい。宇海さんは多分頭良くてもその辺分かってない。
ずっと前「おまえの愛は愛じゃない」と友人に怒られました。私のはただの独占欲です。宇海さんのは愛だといいな。