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□独りにしないで
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うさぎを独りきりにしてしまうと、そのうさぎは死んでしまうらしい。
誰かが言ってた。それは嘘だとも言っていた。嘘か真か、そんなことはどうだっていい。ただ一つ疑問を抱いた。
人間はどうなんだろうね。
人間も独りじゃ生きていけない。これも誰かが言ってた。
協力?助け合い?…馬鹿馬鹿しい。1人が駄目なら2人で生きる?正気じゃない。
どんな人間でも最期は殺し合う運命なんだ。


「でもカイジさんとなら生きてける気がする」


呆れた顔で俺の話を聞いてたカイジさんは、はっと笑った。嘲るような。信じられないと言ってるような。そんな笑い。


「俺とお前2人で?」
「うん」
「有り得ねぇだろ」
「どうして?」


視線が交わる。けれど一瞬でそれは逸らされた。
カイジさんは目を伏せてぼそぼそと言う。


「俺とお前じゃ違うんだよ」


意味が分からない。


「どういう意味?」
「オーラって言うか…生きてる世界とか次元とか…なんか違う」
「何それ…」
「…上手く言えねぇけど、お前は俺とは違うんだよっ…!」


オーラが違う。生きてる世界が、次元が違う。
ならば俺は何なんだ。あんたはいったい何なんだ。馬鹿言うな。俺もあんたも同じ人間だろう?

手を伸ばせば簡単に、カイジさんの頬に触れることが出来るのに。


「カイジさん、同じだよ」
「違ぇよ」
「よく見てよ、俺は今あんたに触れてるんだよ」
「まぁな…」
「あんたに触れられる距離にいるんだ。何も違わない…同じ人間さ」


カイジさんはゆっくりと俺を見た。


「お願いだからカイジさん、ずっと俺のそばにいて」


うさぎを独りきりにしてしまうと、そのうさぎは死んでしまうらしい。
誰かが言ってた。それは嘘だとも言っていた。嘘か真か、そんなことはどうだっていい。ただ一つ思った。
1人は嫌だ。俺もカイジさんがいないと生きていけない。カイジさんとなら生きていけるかもしれない。
ねぇカイジさん、俺も独りぼっちは嫌だよ。

指先から伝わるカイジさんの温もりは温かかった。





(お前うさぎだったのかよ)(うん、だから髪も白いんだよ)(じゃあ死なないように見てないとな)

そう言ってカイジさんは笑った。




(20101103)

書いてる最中に8回PCがフリーズした。時間置きながら書くと話がめちゃくちゃに…もう遅かった。


 

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