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□椿の花
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楽しそうに笑う涯くんの笑顔を見たのはついこの間が初めてだった。カイジさんと2人で話していて、涯くんは無邪気に笑っていた。
俺と一緒にいるときの涯くんの表情は大体仏頂面。照れたり呆れたりもするが、1番多いのはやはり無表情。
俺はそれが普通だと思ってた。普通だと信じていた。


「(だって違うと認めたくなかったから)」


俺と一緒にいてもつまらないの?楽しくないの?
言いたい言葉はたくさんある。もっともっとたくさんある。
だけどそれは口には出さない。言ってしまったら必ず涯くんが困ってしまう。
困った表情は好きじゃない。疎ましく思われたくない。
だから俺はただ一緒に居るだけで十分。


「(だけどそこに他人はいらない)」


涯くんと俺が2人で居られればそれでしあわせだったのに。

カイジさん、どうして邪魔するの?
カイジさん、どうして横取りするの?
カイジさん、どうしてあなたなんですか?

だけど築き上げた信頼を壊すのがこわくて、俺は愛想笑いを取り繕う。この気持ちを知ってるのは俺自身だけ。俺が吐き出さなければいいだけなんだ。
だって、涯くんがもしも俺に興味を示さなくなったらそれはとてもつらい。涯くんがもしも俺を軽蔑したらそれはとてもとてもつらい。涯くんが俺を嫌いになってしまったら、それはとてもとてもとてもつらい。
だから俺は笑ってそばに居続けるんだ。居続けてやるんだ。ずっと。


「涯くん、俺たち友達だよな?」
「ん…そうだな、うん」


今のところ涯くんの友達で居られれば、それで。



椿

(涯くん!俺等親友だよな!)(え…!?)(聞くまでもないか!すまん!ははは!)(孤立したい…)



(111107)
椿の花…控えめな愛、理想的な愛情
宇海さんにとっての控えめ。1番近しい存在でいられればそれで幸せ。とか思ってなさそうだなあ。


 

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