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□きみが望んだことでしょう
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涯くん俺はね?涯くんのことがだいすきなんだ。
涯くんと初めて出会ったのはいつだったっけ?確か大雨の降る寒い日だったよね。俺が家出してさ、そのときに涯くんが俺を拾ってくれて。嬉しかったなあ。
俺は知らない人を家に上げちゃ駄目だって言ったのに、涯くんったら喋った時点で知らない人じゃないって言ってくれてさ。
俺の世界は涯くんでいっぱいになったんだよ?全部涯くん中心。涯くんが望むならそれを叶えてあげたいし、涯くんが嫌がるものがあれば俺が取り除いてあげる。
けどね、涯くんの世界も俺だけで在ってほしいんだ。俺以外の人間のことなんて考えてほしくない。
いったいどこで間違えたんだろうな?しげると仲良くなったとき?佐原さんのいるコンビニに行ったとき?涯くん。どうして涯くんの世界はカイジさんでいっぱいなのかな?
ねぇ、涯くん。
「教えてよ」
「………」
目の前に転がっているカイジさんを見て、涯くんは膝をついてカイジさんに触れる。
涯くん、冷たくなったカイジさんはもう二度と動かないよ?分かるでしょ?カイジさんはもう動かないんだ。
「俺はね涯くん、すきな人に俺以外のすきな人が出来たとき…俺はどうするかずっと考えてたんだ」
バッと俺を見る涯くん。怒りの篭る瞳。
それだけカイジさんがすきだったってことだよね?なんだかなぁ…ちっとも面白くない。涯くんは俺だけを見て俺だけを考えていればいいのに。
「すきな人を殺すか、すきな人のすきな人を殺すか。…俺はきっと後者なんだ」
だってそうだろ?涯くんの選ぶ人が間違ってるとは思わないよ。俺は涯くんを信じたいからね。だけど、もしも俺が前者だったとして、涯くんを殺したらさ、その後俺はどうすればいい?カイジさんを恨んで生きていけばいいの?確かに涯くんを殺せば、涯くんは誰の手にも渡ることなく終わるよ。けどそんなことしたって意味ないだろ。涯くんがいなくっちゃ意味がない。俺の世界は涯くんがすべてだからね。だから俺は涯くんのすきなひと。つまりカイジさんを殺したんだ。あはは、ぼろぼろ泣くカイジさんはかわいかったね。涯くんの趣味も分からなくないよ。ふふ、ふふふ。ああでも安心して?俺がすきなのは涯くんだけだよ。…ねぇ涯くんなんで泣いてるの?そんなに悲しいの?なんで?どうして?俺がいるでしょ、泣かないで。大丈夫だよ涯くん。涯くん大丈夫。そんなに悲しまないで?俺がいるよ。カイジさんはもういないけど、俺がいるから。ずっと涯くんのそばにいてあげるよ。今までもそうだったろ?ちょっと邪魔者を消しただけだよ。これからも今までと何も変わらないよ。だからさ涯くん泣かないで?
涯くんはいつの間にか涙を流していた。涙は零れ落ちてカーペットにいくつかの染みを作り出す。
しばらく俺を睨む涯くんだったが、横たわるカイジさんに目を向けゆっくりとカイジさんを抱きしめた。
もしかして涯くん怒ってるの?やっぱりすきな人が殺されたら怒っちゃうか。うん、分かるよ。俺も涯くんが誰かに殺されたら悲しいよ。悲しくて死んじゃいそうになる。でもさ涯くん悲しまないで、俺がいるじゃないか。涯くんは1人じゃないよ。安心して。安心してカイジさんを忘れればいいよ。きっと出会ったことから間違えてたんだ。ごめんね気付いてあげられなくて。もう大丈夫だよ。俺が忘れさせてあげるからさ。
「ねぇ涯く、」
「触るな…!」
手を伸ばしたら、涯くんがまた睨んだ。だから俺は手を引っ込めた。
「涯くん…?」
「消えろ…」
「え、」
何を言ってるのか、上手に理解できないよ。涯くんもう一回言って?
「俺の前から消えろって言ってるんだ!」
「…なんで…」
「お前は、普通じゃない…!」
俺が、普通じゃない?
「…そうだね、まあ否定はしないよ。俺は普通じゃないね」
「カイジさんが死ななくちゃいけない理由なんて…どこにもなかったはずだ…っ」
「だって涯くんのすきな人だったんだろ?」
「っ黙れ!!」
抱きしめる力を強める涯くん。
「意味分かんないことぺらぺら喋ってないで早く俺の前から消えろ!!」
俺がお前を殺す前に…!!
「…涯くんが俺を殺す?」
「だから早くどっか行け!」
溢れ出す涙を拭うこともせず俺に怒鳴った。
俺が、涯くんに殺される…!
あは、あはは、あはははは!そんなの本望だね。愛する涯くんに殺されるなんて嬉しくて仕方ないよ!どうぞどうぞ、いつでも殺してくれていいよ?俺の最期は涯くん。嬉しいなあっ。愛する人に殺されるなんて夢のようだね。ありがとう涯くん。すっごく嬉しいよ。嬉しくて顔がにやけてくる。笑っちゃうね。ふふ、あはは、あははははっ。…でもさぁ涯くん。そんなことしてどうするの?俺を殺してどうするの?涯くん分かってる?
「俺を殺したら涯くんは1人きりになっちゃうんだぜ?」
「っ」
「カイジさんはいないしぃ、涯くん友達もいないだろぉ?そしたら今度こそ涯くんは1人きり…それでもいいの?」
「…お前が俺の前から消えてくれるんだったらなんでもいいさ」
……涯くんに嫌われちゃった。
もっと泣き崩れるほど悲しいのかなーなんて思ってたけど、実感がわかないのか。悲しいとか吃驚とかじゃなくて、心にぽっかり穴が開いた気分。
「涯くんは俺に消えてほしいんだ」
「ああ…」
「そっか、分かった」
「…え?」
涯くんは予想外だったのかきょとんと俺を見た。あはは、かわいい。かわいく俺を見つめる涯くんに俺は微笑んだ。
「言ったろ、俺は涯くんが望むならそれを叶えてあげるよ」
右手に握る斧を自分の首に突き付ける。カイジさんの血がこびり付いたこの斧の切れ味はとてもいい。きっと一瞬で涯くんの望みは叶うよ、喜んでね。
「涯くんを1人きりにしちゃうのは罪悪感が残るけど…涯くんが望んだんだもんね」
「うかい…?」
「ばいばい涯くん」
だいすき。
言った瞬間、俺は首を刎ねた。俺の瞳に映る涯くんは最期まで泣いてた。
涯くん、最期くらい笑ってよ…っ!
君が望んだことでしょう
((君を1人にすることだけ許してくれ))
2つの死体と1人の人間。やがて残された人間は、
* * *
今年初がこれとはひどい。何が書きたかったのかというと、三角関係というどろどろを書きたかった!…私、修羅場がすきなのかな!
てかカイジさん殺しちゃったようわああああああああ!ごめんなさいごめんなさい本当にごめんなさいいいいい…!
えっと、零は涯くんのためなら何でもすると思うんですよね。頭いいけど、恋愛には疎そうだから。
どうすればいいんだろう、どうすれば自分を見てもらえるだろうって考えて結局殺害。あれれ。
恋愛に関しては馬鹿だとかわいいな!←