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□自分らしくはないけれど
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「おい」
「何」
アカギのぶっきらぼうな呼び掛けに、背を向けていたしげるが顔だけを振り向かせた。身体は変わらずアカギに背を向けたままである。
アカギはその現状に少しイラつきながらも、先ほどから掛け続けてる言葉をもう1度しげるに投げかける。
「何それ」
「だから…人形」
「なんでお前がそんなの…」
ちらりと見えた茶色の物体。もふもふしてるだろうその物体は子供が喜ぶぬいぐるみと見える。
そんなものをなぜしげるが持っているのか、アカギには疑問だった。
小学生ならまだ少しは理解できたが、ましてや13歳の少年が…そして、さらに言えば6年前の自分自身が、なぜ女子供が喜ぶものを持っている?
「赤木がくれた」
「…俺が?」
「…違う。赤木だよ」
赤木がくれたんだ。
もう1度繰り返して、やっとしげるはアカギと向き合った。
黒くて澄んだしげるの瞳とアカギの同じその瞳と目を合わす。しげるとアカギの違う所と言えば、アカギは眉間に皺を寄せているということ。
自分じゃないアカギ。しげるじゃないとしたら、思い当たる節は53歳のもう1人の自分しかいなかった。
確かにあの人ならしげるにこんなものを寄越してくれるだろう。
「…じーさんの方か」
「うん。“たまには子供らしくしてろや”って」
「まぁ確かにそうしてるとちょっとはガキに見えるね」
その言葉に今度はしげるの眉がぴくりと動く。“ガキ”と言われたことに若干不満があるようで。
腕の中に抱いているクマのぬいぐるみに、しげるは軽く顔を埋めた。
「子供扱いしないでよ…」
小さく聞こえた。その言葉を聞いてアカギは少し口角を上げた。そしてしげるにゆっくりと近づいて、すぐ近くで腰を下ろした。
警戒することもなくしげるは顔を上げてアカギを見る。煙草を咥えたままのアカギ。視線を交わらすことはなく、
「フフ、くすぐったい」
無言でしげるの頭を撫でた。
わしゃわしゃ。わしゃわしゃ。しばらく撫で続けた。
自分と同じ真っ白なその髪をくしゃくしゃにした後、煙草を口から離してアカギは言った。
「別にいいんじゃねぇの。ガキでもガキじゃなくても」
お前だし。
「…アカギがそう言うなら」
しげるはまたぬいぐるみに顔を埋め、ぎゅっとそれを抱きしめた。そして横目でアカギを確認する。
煙草を咥えて煙を吐くアカギ。しげるはその様を見て小さく微笑み、アカギもまた同じように微笑んだ。
自分らしくはないけれど
((結局アンタがいいと言ってくれるなら何だっていいんだ。ほら、この人形だって可愛く見えてくる))
(20100502)
友達に捧げる1900と1913のキリリク。遅くなってごめんね!そんでもってこんなのでごめんね!
いかに13歳を子供らしく書けるか頑張りました。やっぱり19歳がよく分かりません。