YUME

□ロマンチックブルー
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水面が星空を映し出していて、まるで宇宙にいるみたい。
目を閉じればほら、私は宇宙に包まれてるんだ。


「楽しい?」
「楽しいよ」


現実に引き戻される。
分かってるよ、ここが宇宙なんかじゃないくらい。変哲も無いただの中学校のプールだ。
私は大の字になってプールに浮かんでた。それをプールサイドでしげるが見てた。


「あんたの考えてることが分からない」
「そんなのお互い様じゃない?」


間髪を入れずに答えると、しげるは黙った。


「単にプールが好きなわけじゃねぇだろ?」
「当たり前でしょ」
「じゃあ何がしたいわけ」


何がしたい?そう聞かれても困るな。別に何がしたい訳でも無いんだもの。
じゃあ帰って寝たら、としげるは嘲笑った。
私はまた目を閉じる。


「そうしたらまた明日が来るじゃない?」
「明日に来てほしくないの」
「別に?」
「じゃあどういうこと」


耳に入り込む水と音。
波の音と夜の音。
沈む。沈む。沈んでく。


「別にー」
「…あんたって変わってるよね」
「だからお互い様でしょ?」


ポケットに手を突っ込んで、しげるは喉の奥を鳴らして笑う。絶対笑いにくいだろうにその笑い方。
私も真似して笑ってみる。…やっぱり笑いにくい。
足をばたつかせて少し移動してみた。ばしゃばしゃ。


「結局のところ、あんたはどうしたいの」
「どうもしたくないかな」
「死にたいの?」
「死にたいわけじゃないよ」


生きているのも面倒くさいけれど、死んだって何も面白くない。

しげるはふーん、と言ったきり黙った。私も同じように黙った。
ぴたり。足を止める。
目を閉じれば、ほら。私はまた宇宙に包まれる。


「楽しい?」


しげるは先程と同じ質問を私に投げかけた。
私は先程と同じようにその質問に答えた。


「楽しいよ」


そしてまた現実に引き戻される。
世界が君と私の2人きりだったら良かったのにね。






(明日が来たら嫌でも現実を見なくちゃいけないでしょう?)(…)(人気者の君なんて私は見たくないの)


だから宇宙に包まれる。今日も、明日も、明後日も。







(100704)

周りの人たちに嫉妬。しげるはきっとその感情さえ理解できないと思う。




 

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