YUME

□嘘吐きピエロ
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誰だっていつからか無意識に笑顔を作ることを習得している。
笑えなくても人は笑える。辛い時も寂しい時も。


「人を殺したんだ」


恐怖心を抱いた時も。
私はそうなんだと呟いて、熱いコーヒーをカップに注いだ。ミルクと砂糖もたっぷり入れる。
君は首をかしげて私を見つめた。


「どうして笑顔なの?」
「分かんない」


目の前の人が何を言っているのか分からなくて。夢と現実の区別がつかなくて。お得意の作り笑いを披露した。
だってそんな、何でもない風に言うことじゃないでしょう?誰かを殴ったみたいに言うことじゃないでしょう。
とりあえず笑っておけば何とかならないかな、なんて。


「どうやって処理しようかなあ…」


なるわけがないのに。


「細切れにして埋めるのがいいかな?」
「分かんない」
「シチューと一緒に煮込むとか?」
「分かんない」
「どうしてさっきから同じ言葉で返すの?どうしてずっと笑顔なの?」
「(…分かんない)」


ただただ笑顔を維持して、極力核心に触れないようにした。
だってこの人は殺人者になってしまった。それが事故か故意かは知らないけど、この人は人殺しなんだ。
恐怖心で頬が引きつる。そろそろ痛い。だけど止められない。
機嫌が悪くなったら殺されてしまうかもしれない。
こわくて。こわくて。


「殺さないよ、君は殺さない」
「…あはは」


本当に?とは聞けなかった。
まずはその開き切った瞳孔をどうにかしてもらわないと。
震える手でカップを握った。心なしかコーヒーは温かった。味は、分からなかった。








(君を笑わせてあげる!ほら、笑って)




(20110520)
分からないことだらけ。
タイトルの方が先に思いつきました。瞳孔開いた宇海さんまじこわい。




 

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