NOVEL's

私を思って
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「じゃあねぇ〜♪」

ヒラヒラと手を振り、外へ行ってしまった。もう少し別れを惜しむことはないのかしら。寂しいのは私だけなのかしら…。
悔しさと共にキュッと唇を噛み締める。頂いた紙袋を抱きしめて自室へ足を運ばせた。



「これは…。」

頂いた紙袋から箱を取り出し、中を開けてみると、見慣れない機械。薄いピンク色をした洒落たデザインの入った携帯電話だった。
携帯電話を持っていない大人も珍しいのかもしれないが、孤島に住む私は持っていなかった。
若干絵羽さんの香りが残る箱から全て出し、分厚い説明書をパラパラとめくってみた。
が、意味不明な単語や、あまりのページの多さに挫折。
とりあえず電源を付けてみようと、説明書を開いた。

「えっと…、電源ボタンを5秒以上…」

説明書通りにボタンを押し、機械音と共に画面が映る。画面が映り、待ち受け画面には綺麗な黄色いパンジーが映っていた。そのままパンジーと見つめ合い、次はどうしようかと悩む。

それより、何故絵羽さんが私に携帯を渡したのか。確かに持っていなかったけれど、欲しいとは言っていないし…。料金はどうしたらいいのでしょうか…。
ふぅ、とため息をついてから携帯のボタンを適当に押してみる。
あ、カメラ機能があるなんて…最近の携帯は凄いですね…。
と、関心しつつカメラでちょっと部屋を撮ってみた。少しだけ遊んでみたけれど、誰の連絡先も知らない私にとって、これはただの機械にしか見えない。電話としての機能を果たせない。


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