【No Title】
□【入学編】入学式にて
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少し時が遡り校門にて
多くの生徒が氷帝学園の門をくぐる中
1人校門の側でその水浅葱色に満開の薄桃色の色を移す
「(今年は桜が満開なのか・・・)」
入学式といえば確かに桜のイメージはあるが、実際の開花シーズンはやや早く
あまり入学式と桜の満開時期が重なることは少ない
珍しい光景に目を奪われ
緩やかに迫る入学式までの時間を優雅に楽しんでいた
それから何分経っただろうか
10分程度だったか、もしくは30分以上も立ち尽くしていたかもしれない
桜を目に宿している琥珀の耳を女性の甲高い声が遮り
ようやく桜から目を離すこととなった
「跡部様〜!」
「今日もお美しいです」
「跡部様、ごきげんよう」
琥珀が目線を声のする方に向けると、そこには黒光りしたリムジンから
1人の金髪の男の子が出てくるところだった
恐らく彼が、女性達が騒いでいる『跡部様』なのだろう
彼が出てきた瞬間、跡部と琥珀の目線が緩やかに交わり
跡部の整った眉毛が少しばかり動いたことを彼女は感じ取った
彼女は何故?と疑問に思ったが、跡部はすぐさま琥珀に背を向け
横にいる大柄な男の子と一緒にエントランスの方に向かって歩いて行った
「(金髪に青い目・・・日本人離れしてるなぁ・・・)」
←他人事
入学式の時刻も近づいてきたため、琥珀は再び桜に目を向けることなく会場に向かって歩き出した
「(さっきの女、あれが霧原琥珀か・・・
感情の読めねえやつだったな)」
自分と顔を合わせたにもかかわらず
反らさず真っ直ぐ濁り無く見つめてきた水浅葱を思い出す
「今年も面白くなりそうだな、なぁ?
樺地」
「ウスッ」
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