12/05の日記
00:16
ヒバツナ子
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「赤ん坊いる?」
勝手知ったる面持ちで部屋の窓から進入してくる雲雀さんは俺が(めずらしく)勉強中だろうが、ゲーム中だろうがあまつさえ着替え中だろうが、、おかまいなしだ。
さすがにお風呂上りにバスタオル一枚でくつろいでいた時は、流石の俺もキャアアアなんて大声を出して泣いてしまった。
それでも平然として真顔で「赤ん坊は?」なんて聞いてきた雲雀さんに、俺は彼の目に異性として映ってないのだろうか・・・・、、と凹んでしまった。
そして今日も今日とて彼はやってくる。
「赤ん坊いる?」
「・・・・今日は少し前に出掛けてきました。」
「じゃあ、待たせてもらうよ。」
最近はタイミングが合わないみたいで雲雀さんが尋ねて来る度にリボーンはいない。
リボーンを待つその間、、俺は雲雀さんのお相手をするのが当たり前になっていた。
「お茶、入れてきますね。」
パタパタと急ぎ足で階段を下りて、キッチンでお湯を沸かす。雲雀さんが来るようになってから色々とお茶の種類にも気を使うようになり、いつの間にか棚にはコーヒー豆から日本茶、紅茶の茶葉の缶が5、6個常備されてる状態だ。
この日はアップルティーにしてみた。
ポットとティーカップを乗せたトレイを慎重に運びながら階段を上り部屋の前で立ち止まる。
紅茶のセットは重さがある為片手で支えて片手でドアノブを引くのは困難である。どうやって開けよう・・・・と考えていたらカチャリ、、とドアが向こうから開いた。
「・・雲雀さん!!あ、ありがとうございます。」
彼の小さな優しさが本当に嬉しくて、、笑顔でお礼を述べる。
雲雀さんはむっつり黙ってそのままサイドテーブルへ戻って行ったけど、俺はその様子も「雲雀さんらしい」と思えて頬がずっと緩んだままだった。
誰だって、、好きな人に優しくされたら嬉しいに決まってる。
俺はこの、怖くて強くて、、自分にも他人にも厳しくて・・・判りにくいけどもちゃんと優しい所も持ってる彼をいつの間にか好いていた。
「(脈なんてなさそうだけど・・・。)」
雲雀が自分を少しは認めてくれてはいるけれど、好いた惚れたの感情は期待できはしない。
だっていつも彼が会いに来るのはリボーンばかり、、。
自分の着替えやバスタオル一枚の格好を見ても赤面もしてくれないのだから。
先程の嬉しさも何処へやら“ハァ、、”とため息を小さくついて雲雀の前へ紅茶を注いだティーカップを差し出そうとしたら、机の上には可愛らしいピンクの紙バッグがあった。
「・・・・・お茶うけ。」
「わあ、ありがとうございます!!あっ!マカロンだ!!俺、これ大好きです!!」
最近の雲雀は尋ねて来る度にお土産を持ってくる事が多い。ドーナツやケーキ、、老舗の和菓子から屋台で売ってるタイヤキやたこ焼きなんて時もある。
雲雀と二人っきりで過ごすこの時間綱吉は嬉しさでいっぱいの半面、、実際はリボーンが帰ってくるまでの間の身代わりの様なモノだという寂しさがある。
「(いつか・・、、いつかリボーンでなくて俺に会いに来てくれる様になったらいいのに・・・。)」
甘酸っぱいラズベリーのマカロンを頬張りながら綱吉は今の自分の心みたい・・・、、と思った。
――――ーいつ、気づくんだろう。
嬉しいのか寂しいのかよく分からない表情でお菓子を頬張る綱吉を雲雀はさっきからじぃっ、、とみつめている。
そう、本当は雲雀も綱吉の事を想っているのだ。
リボーンに用事があるとかこつけて度々訪れ、、その度にリボーンがいないというのも実は裏で話をつけていて事実は綱吉に会いに来てるのが本当なのだ。
“好き”という今まで知らなかった感情にドギマギして、どうしたら良いのか判らない。
側にいたい、、観ていたい、、そしてもし触れ合えたらなら・・・・、、綱吉を前にしたらそればかり考えてしまう。
そしてうまく感情を表情に出すことも苦手だ。
綱吉に笑いかけられたら、自分も微笑み返せばいいのに恥かしくてそれができない。
以前、、彼女の着替え中や風呂上りの場に遭遇した時も刺激的な姿にドキドキを通り越して心臓が爆発してしまいそうだったのを覚えている。その度にどうにかして平静を保っていたが、、その後家に帰るなり頭のてっぺんから足のつま先まで真っ赤になって倒れたもんだった。
つまり、不器用な男なのだ。雲雀恭弥という人間は。
「・・・・・・ったく、いつまでたっても進展しねー。雲雀も案外お子様だな。」
沢田家の屋根の上、小さな家庭教師が中学生日記な二人にあきれているのでありました。
(ヒバ→←ツナ子)
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