12/13の日記

01:38
鉢x♀雷
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小学生男子というのは、実に子供だ。
だからマザー・グースの詩にぼろきれやカタツムリ、、子犬の尻尾でできている、、と表現されるのだと三郎はつくづく思う。

三郎も同じくそんな小学生男子であるが、三郎は同級の男子生徒らとは違って思考能力が随分と高く性格も大人びていた為、小学五年生にもなってつまらない芸人の真似をしたり、女子生徒にスカートめくりをしかけたりな一部の男子生徒らには「(幼児の悪ガキと同じレベルだな)」と幼稚な行為に軽蔑をし、そういった彼らの輪には絶対に加わろうとはしなかった。

そんな三郎は同級生の男子の一部からは“すかした奴”と目をつけられる事もしばしばだった。
自分らと合わせておもしろい事もしないし、悪戯にも付き合わない。しかしただ単に大人しくて暗いヤツ、、という訳ではない。
三郎は頭も良くて運動もそこそこでき、、クラスの全体の多くは三郎に一目を置いているのだ。
とりわけ女子には「鉢屋君は他の男子とは違うわ」と大半から好意を寄せられてもいる“リアル出来杉君”という訳だ。

そんな三郎に“気にいらない”とう理由で何かしようモノなら大半の生徒が三郎の味方に付くのは判っているので手出しはしない。
三郎も自分の得にもならない奴らと係わり合いになるのは至極御免だと、、そんな悪ガキグループと三郎は『お互いに干渉せず』という形で今日まで過ごしてきた。



しかし、しかしだ。
それは今日の昼休みの出来事によって破られた。

―――その日の昼休みは三郎にとって幸福の時間であった。
その日の図書委員は絶賛片想い中の相手、、隣のクラスの“不破さん”が当番だったのだ。

「(不破さん・・、今日もかわいいなぁ〜、、)」

返却された本を丁寧に本棚に戻していくその姿を、三郎は本に顔を隠しながら盗み見る。
スラリとした長身の彼女は小学五年生にしては成長も早く、、見た目だけならば中学生と言ってもおかしくない。
三郎は大人びた内面に反して、実は背丈は学年でも低い方に分類されるのだ。
160センチの不破さんに対して自分は142センチと、、その差が埋まるのにどれぐらいかかるのだろうか・・・・と三郎はそれが目下の悩みでもある。

その時だった。「キャアアアーーーー!」と数名の女子生徒が悲鳴と共に図書室へ飛び込んで来た。

「雷ちゃんかくまって!!」「一組の男子が・・・っ!!」「ずっと追いかけてくるのーっ!!」

怒り顔、泣き顔、困惑顔、、と其々の女子が不破さんへと駆け寄った。突然の騒ぎに図書室にいた下級生も上級生も不破さんとその女子生徒らへと視線が集まる。
一人の女子が言ってた“「一組の男子が・・」”それは三郎のクラスの男子という事だ。
しかも女子を追いかけて・・・・というのならばきっとスカートめくりをしようとしつこく追い掛け回していたのだろうか。

「(・・・ったく、本当にくだらない奴らだ。全員赤ん坊から人生やり直せ!!)」

折角の至福の時間を奴らに邪魔されたようなものである。三郎は苛々とした気分で悪ガキグループらに心の中で罵倒を浴びせる。


「おい!いたぜ!!図書室だ!!」「こっちだこっちにいたぞー!!」「いえーい!!ターゲット発見っ〜!!」

バタバタと騒がしい足音が集まってくる。
図書室の入り口で数名が大声で仲間を呼び、例の悪ガキグループらが先程の女子生徒らを追ってやってきた。

キャアアア!!と悲鳴をあげて女子らは雷蔵の後ろへと隠れる。一人はすっかり涙目だ。
そんな様子を男子生徒らはニヤニヤと笑いながら四方八方ぐるりと取り囲む。
下級生らは突然の騒ぎに恐れて図書室から逃げてしまった。残った上級生も、、取分け大人しい人間ばかりで遠巻きに成り行きを見守るしかなかった。


「ここは図書室です!!騒ぎをおこすなら出て行ってください!!」


凛とした、、大きな声が室内に響く。不破さんの声である。
後ろに隠れた女子らを守るように両手を広げ、目の前の不埒な男子生徒らをキッと睨む。
自分らよりも背の高い人間に凄まれると圧倒されるのか、ひるんだ様子の彼らは一塊になって、ひそひそと話し込んでいる。

「一組の先生にあなた達のした事を注意してもらいます!!」

そう、不破さんが注意した時だ、、。
リーダー格の男子が不破さんにすばやく駆け寄って・・・・

ムニュリ、、。彼女の小学生にしては発育の良い胸を鷲掴んだのだ。

「・・・・っ!!!!」

突然の出来事に三郎の思考が一瞬ショートし、持っていた本がバサリと音を立てて足元へ落ちた。


「いえーい!!不破のおっぱいさーわった!!ヒューウ、、でっかぱーい♪♪」
「おっぱーい!!おっぱーい!!不ー破はでっかぱーい!!」

なんという幼稚で下品な奴らなのだろうか。
ケラケラと馬鹿騒ぎする男子生徒のすぐ側で彼女はショックを受け、、小さくうずくまってポロポロと涙を零していた。

大好きな女の子が辱められ、、泣いている。

理解した瞬間、、カッと頭に血が昇ったのを感じた。
気が付けば三郎はリーダー格の男子へと顔面めがけておもいきり殴りかかっていた。

「なんだ鉢屋このやろう!!てめぇ何するんだ!!」

「おまえこそ何してやがる!!絶対許さん!!殺してやる!!」

「はっ、、このチビが!!女子の前でええカッコ付けかよ!!」

三郎に殴られた男子が三郎の上着を掴んで床へと張り倒す。床へと転がされた三郎へと他の男子が一斉に襲いかかる。
それから教師が止めに来るまでの間、多勢に無勢、、ではあったがどんなに痛めつけられても三郎は何度でも立ち上がっては手当たり次第に拳を振り上げ蹴りを入れ、、頭突きに噛み付きと思いつく限りに闘った。

そんな三郎の今まで見た事も無いそんな姿に男子生徒らは恐れを抱いた。
今まで何があっても我関せず、、と距離を取って係わり合いをもたずにいた相手が自分達へと立ち向かって来たのだ。
怪我の具合は三郎の方が重傷だ。けれど、、彼らにはそれ以上に三郎を本気で怒らせると恐ろしいという恐怖心が埋め込まれたのは間違いなかった。


――その日の夜、三郎は怪我の痛みで熱をだして、、翌日学校を休む事となった。

母親には「もっと体力をつけなさい!そんでもって次は勝ちなさい!!」と喧嘩を怒られるどころかはっぱをかけられた。
(三郎の母親は我が子が理不尽に喧嘩をしたのでは無いと直感で判っていたのだ。)

湿布と絆創膏だらけの身体は痛くて辛い。
けれど、、身体の痛み以上に痛いものもある。

三郎は不破さんの事を心配していた。

彼女は純朴でほわほわと春の日の木漏れ日の様に暖かい心を持った優しい天使のような少女なのだ。
あんな不埒な行為を受けて心の傷は大丈夫だろうか・・・、、

“女の子って何でできてる?
 砂糖やスパイス
 すてきなことがら
 そんなものでできてるよ”

マザー・グースの表現は正にその通りだ。
女の子は、不破さんは、、そんな綺麗なモノでつくられている。


「・・・・・しかし、不破さんに野蛮な男と思われてしまってたらどうしよう・・。」


あの時の自分の怒り狂い様は今思い出しても、、・・・思い出せないくらいに記憶が飛んでる。けれど身体中の傷を見てみればどんなだったかは想像できる。
ベッドに潜り込み長いため息をつく三郎へとお見舞いの客人が現われるのは数時間後の事。




――赤いランドセルが少しだけ窮屈な背の高い女の子が、昨日三郎が読み落とした本と共にやってくるのだった。



(小学生な鉢x♀雷)
長くなったけど・・・満足!!(^^)

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