12/17の日記

01:28
5年ズ→♀雷
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「雷蔵、決まったか?」
「うーん、まだ、もうちょっと・・・」
「この昼休みの内に決めて、放課後予約しに行かないとどれも売り切れるぞ。」
「だって・・・、、こんなに色々あったら迷うに決まってるだろう!!」

うわーん、、もう、決めるの疲れた!!、、と雷蔵は図書室の隅の席で様々なクリスマスケーキが記載されたカタログの山をグシャグシャに混ぜ合わせた。

幼馴染み同士で集まる毎年恒例のクリスマス会。今年は雷蔵がケーキを決める担当だというのにまだ決まっていないのだ。
幼い頃から重度の迷い癖のある雷蔵は何か選ばせれば結論が出るまでに何時間もかかってしまう。
クリスマス会のメインともいえるケーキ選びだって三郎が二週間も前からカタログを渡し、じっくりと選ぶように!と言っておいたのに・・・・。

「・・・・三郎が選んでよ。僕、どうやっても選べそうにない…。」

「駄目駄目、今年は雷蔵がケーキを選ぶ番って決まってるだろう。」

「だって・・・、、」

生クリームたっぷりのスタンダードなイチゴのケーキも美味しいし、はたまたチョコレートクリームもたまらなく魅力的だ。
けれどもリッチに大人っぽいザッハトルテも捨てがたい。
暖かい部屋で堪能するアイスクリームケーキだって喉をくすぐる。
ムースもチーズクリームもタルトも、一つ一つに魅了が詰まっている

甘いお菓子が、とりわけケーキが大好きな雷蔵には、どれか一つか、、なんてどうも決められない。
欲を言えばどれも食べてみたい気持ちでいっぱいだ。

ぐったり、、机に突っ伏しそうになったその時だ。

「あ〜!!二人共いたいた〜。」
「おーい、三郎クリスマス会のゲーム『wii』でいいか?お前色々ソフト持って来てくれよな!!」
「・・・・とりあえず会場は今年は俺の家に決まった。母さんに言って一階の和室確保したから。」

幼馴染の勘右衛門、ハチ、兵助らが雷蔵と三郎の元へとやってきた。

「あれ?雷蔵どしたの?また迷いごと?」

勘右衛門が雷蔵の深刻なハの字眉に気が付いた。

「う、うん・・・、、。まだ、あの、クリスマスケーキが決まらなくて・・。」

「雷蔵、おっそいなー!いいからもう、フツーのショートケーキの大きい奴にしよーぜ。でっかい苺とサンタが乗ってるの!!なっ、」

「おい、ハチ。それは去年お前が選んだのと同じじゃないか。・・・・雷蔵、今年は豆乳レアチーズケーキはどうだ?」

「へーすけ、クリスマスくらい豆腐関連から離れよーよ。雷蔵、俺、サーティワンのアイスケーキがいいな!!あの、パチパチしたヤツ入ってるのが食べたい〜〜♪」

迷ってる雷蔵に各々が好物のケーキをアピールする。

「くおらっ!!ハチも兵助も勘も、、!!今年はお前らの食いたいケーキじゃなくて雷蔵が食べたいケーキを選ばせるんだろうっ・・!!」

「「「はいはい、、。」」」

・・・で、どれにするの?
と。四人の視線が雷蔵へと突き刺さる。

「うう、、〜〜〜〜っ、」

何でもいい、好きなものを、、、。
そんなの言われたら選べない。選びきれない。
選べないのなら・・・、、ああ、そうだ、こうしよう・・・!!

悩みに悩んでいい考えがひらめいた雷蔵は、自分の手帳を取り出し、後ろに付いている切り離しのできるメモを四枚取り外した。

それぞれ『ショートケーキ』『チーズケーキ』『アイスケーキ』『チョコレート』と大雑把にペンで書き記した。

「はい、皆一枚ずつ持って。」

「は?」「へ?」「ん?」「ほー?」

四人の手にメモが渡された。一体これは・・・、、

「はい!じゃーんけーーん・・・ぽいっ!!」

「「「「!!!!!!」」」」

突然のジャンケン合図に、とっさに四人はそれぞれ拳をジャンケン仕様へと形作った。

「あ、勝った、、、。」

突然の勝負の勝者は『パー』で一人勝ちの勘右衛門だ。

「わーい、勘ちゃんが勝ったから、今年はアイスケーキに決まり!!」

「え〜、マジ?やった!!」

「「「ええええええ?!そんな決め方?!」」」

「だって・・・、選び切れなかったんだもん。だから四人でジャンケンしてもらって勝った人を選ぼうと思って。」

――だから、勘ちゃんに決めました!!

そう、にっこり笑ってギューっ、、と勘右衛門の手を握る雷蔵はようやくケーキが決まった事に心から安堵していた。

しかし、、、、

「まてまてまてまてっ・・・・!!一回勝負なんてずるいぞ!!おかしい!!やり直しを要求する!!!」

「そうだ!!ジャンケンは最低10回は勝負しなきゃあな!!」

「俺は、本当はチョキを出すつもりが指がつって勝手にグーになってしまった。だから本当はあいこでやり直しすべきだ!!。」

三郎、ハチ、兵助が何やら鬼気迫る迫力で今の勝負に“不服”を申し立てる。

「え、そんな、僕はもう別にこのままでいいんだけど・・・」

「そうだそうだ、雷蔵はもう“俺”に決めたんだからあきらめてくんない?」

三人に見せ付けるかのように勘右衛門は雷蔵と未だ繋いだままの手を揚げ、二カリ、、と無邪気な笑みを浮かべる。

「・・・・っ!!“お前”じゃなくて“アイスケーキ”だろ!!」

ギリギリと歯を食いしばりながら三郎が、勘右衛門を睨みつける。
隣にいるハチも三郎と全く同じで、兵助も歯は食いしばってないが面白くなさそうに勘右衛門を見据えている。

「(え、え、え、??どうして?そんなに皆、自分のオススメのケーキがいいのかなぁ、、、、。じゃあいっそ全部買っちゃう・・??でも、お小遣い足りなくなっちゃうなぁ・・。)」

少しばかり、いや、大分鈍い雷蔵は気付かないのだろう。
どうして四人がこんなにも“選ばれた事”に対してピリピリしてるのかが。

四人にとってこの“選ばれる事”は近い将来、、願わくば雷蔵にその意味での“選ばれる事”に通じているように思えてしょうがないのだ。


““「だって、、、選び切れなかったんだもん。だから四人でジャンケンしてもらって勝った人を選ぼうと思って。」””


先程の雷蔵の言葉にドキリとしたのは誰もが同じ。

―――たった一回きりのジャンケンで、この恋の争奪戦が決まってはならないのだ。


あわわわわ、と困惑のままうろたえる雷蔵を他所に、四人の若者は残りの昼休みの30分間、人生で最も真剣なジャンケン勝負を続けるのであった。







(幼馴染な5年ズ→♀雷)

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