01/29の日記

02:49
五年ズ→雷
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その日は、五年生全員の校外実習の日だった。それも“女装”して、、のだ。僕はあんまりお化粧が得意ではないからいつも三郎に手伝ってもらってるのだけどそれじゃあ何時までたっても変装の術がじょうずにならないからと、、先生に「各自の力で変装するように」と釘をさされた。

三郎は「私の楽しみが・・・!!雷蔵を可愛くめかしこみたかったのに・・!!」となにやら恨めしそうに先生の背中を睨んでいた。
そんな訳で、僕は自分の力で髪を結い、お化粧を施さねばならなかった。

一番最初に支度が出来たのは三郎だ。
折角のお得意の変装の授業なのだから美女の顔に化ければいいものを、元々借りてる僕の顔に鮮やかな化粧を施し、以前に二人でおそろいで購入した着物を丁寧に着付けて完璧な“女性”へと成りすましていた。

「さすが三郎!!雷蔵と同じ顔なのに、ちゃんと女に見えてるなー!!」

「ふん、雷蔵がもともと可愛いからこそ、、だ。だからこそ雷蔵の化粧も私が施したかったのに・・・!チッ!」

部屋の外で三郎と竹谷の会話を聞きながら、僕はゆっくりと丁寧に化粧を施していた。
ふだん大雑把な僕だから、せめて女装の時くらいは丁寧にしなければ・・・。と、鏡を見ながら自分の顔に手をあてた。

おしろいははたき過ぎず控えめに・・・。頬紅は、じつはあまり好きじゃないから今回は止めておいた。
三郎との化粧に違いがでてひょっとしたら怒られるかもしれないけど今回は“僕の変装術”なのだから僕の思うようにやってみるのだ。
最後に、淡い桃色の紅をうすくつけた。

「・・・うん、こんなもんかな・・?」

鏡を見れば、いつもの僕の顔が化粧のおかげで少しだけ娘らしく映る。三郎に比べたら断然地味だけど、これが僕らしさなのだ。
平凡な村娘で上等だ、、と三郎とおそろいの着物に袖を通した。


―――すっかり身支度が終わって部屋の外に出ると、兵助と勘右衛門も待ってくれていた。
二人は流石い組、、と言った所で女装姿も優秀だ。

「やっと終わったか、雷蔵。残ってるの俺たちだけだぞ。」

「おお、雷蔵!すっかり娘さんだね〜!その紅の色よく似合ってるよ、、。」

「待たせてごめんね、兵助、。ふふっ・・、、勘右衛門もしっかり娘さんじゃない。その水色の着物よく似合ってるよ!」

「うーん、雷蔵は三郎に比べると地味・・・?でも、なんか雷蔵の方がなんか素朴で純真そうだ!雷蔵の方が俺、好みだなー!!」

「ありがと、ハチ。」

「ああああ、雷蔵・・・可愛いっ・・・!!」

「ちょ、三郎・・、、わーっ!顔が近い近い!!あっ、こら引っ付きすぎだよ・・・、着物が崩れちゃうだろう!!」


そんなこんなで、じゃれつく(?)三郎をひきずりながら学園の門をくぐり、町へと向かった。今日の実習は女装をして思い思いの店で買物をする、、そういう内容だ。
けれどその買物も普通に買うだけではなく話術やら色目やらを使ってどれだけオマケをしてもらえるかで点数がつくのだ。


「やっぱり、こーいうのは顔が綺麗なほうが絶対得だよなぁ!!」

竹谷が恨めしげに兵助に視線を向ける、、。この中ではダントツに兵助が秀でているのは間違いないからだ。

「・・・・俺は、あまり話すのが得意じゃないから自分から切り出したりはしにくい。俺より勘右衛門の方が愛嬌もあるし話術も巧みだろう・・?。」

「俺?うーん、確かに自信あるかも♪」

「否定ぐらいしろ!!私もまぁ、自信はあるぞ!!一件だけじゃ事たらん、、。ついでに色々入用の品をここで一気に回って全てオマケしてもらうつもりだ。
・・・が、しかし!雷蔵の姿を借りて色目を使うのはあまり気が進まないから、その間はミスマイタケの顔を借りるつもりさ!!」

「なんだよーずっりぃー!!鉢屋ー!!」

やんややんやと楽しく歩く道すがら、僕ははた、と皆の髪に飾られた髪飾りに気づいた。
ああ、しまった・・・!!忘れてしまっていたのだ。

「・・・どうした?雷蔵?」

おろおろとしている僕に三郎が心配げに声をかける。

「髪かざり・・、忘れてた・・。」


やっぱり僕はどこか抜けてしまってる。
皆、キチンとしてるのに僕だけミスをしでかして恥かしくて小さなため息を吐いた。

「ら、雷蔵!!私のを使え!!」

「三郎、駄目だよそれはできない。」

「うううう、、私が君の髪飾りが無いのに気づいてやれなかったとは!!すまない雷蔵!!」

「お前があやまることじゃないだろう・・。」

僕以上に愕然としている三郎を、なんでか僕がよしよし、、とあやしてしまっている。
本来なら僕が落ち込む所なのにしょうがないヤツだ・・・、、困ってしまう暇がないのだから。

結局『無いものはしょうがない!!。』と、気を取り直そうとしたその時だった、、



「―――はい、雷蔵。」

「え?」

そんな言葉と共に右耳あたりに何かを挟みこまれた。
一体なんだろう・・?目の前の勘右衛門はニコニコと満足げだ。
そっと手で触れてみた・・・・・、、これは・・・。

「花・・?」

「うん、髪飾りの代わりに。このほうが雷蔵に似合っててすんごい可愛いよ?」

勘右衛門の指先でくるくると回っている枝の付いた花を見れば、僕の髪に飾りつけられたのが山ツツジだと判った。

「ありがとう勘ちゃん・・・!」

彼の機転のおかげで、どうやらちょっとは自分の髪も賑やかになったと手を握って笑顔で礼をのべた。

「ねぇ、皆、どう?!」

様子を見てもらいたくて三人へと振り返って見れば、三郎も兵助も竹谷も何だか難しい顔をしている。
・・・・あれ?ひょっとして似合ってないのかなぁ・・・。

「これ、駄目かなぁ・・・・?」


「・・・・・・いや、、そんなこと、ない。」

「・・・・・・可愛い。・・けど」

「・・・・・・雷蔵にはもっと別の花の方がいいんじゃないか?。」

その瞬間。僕の隣にいた勘右衛門も交えて、なんだか四人の視線が合わさってバチバチと火花が散ってるように見えてしまった。

・・・・・何故?



そこから町へと行く道中、他の三人が「この花のが良い!!」「いいや、私の選んだのだ!!」「雷蔵にはこれが一番だ!!」と勘右衛門の挿してくれた花を取り替えるように強く勧めてくるのだった。


(室町五年→雷蔵)
(^3^)女装ネタ大好きvv

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