08/17の日記

02:04
鉢→♀雷
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「あっつー・・・、、」

首元に流れる汗に眉を顰めながらも、夏の日差しが照りつけるアスファルトの道を10分程歩き横断歩道を渡れば、自宅の一番近くにあるドラッグストアへとようやく到着できた。
毎月“7”の数字のつく日は全ての商品が3割引の特価販売を行うそのドラッグストアは、本日は“7日”で休日と言う事もあっていつも以上に人も賑わい、店内の通路を進むのもやっとの状態であった。


「あー、もう!!なんで私がこんな買出しなんて・・!!どうして今日は休日だったんだー!!」

せっかく新発売のゲームを楽しんでいたと言うのに・・・・!!、、とぶつくさ文句を零すも母親には逆らえない。それが世の中学生男子というものだ。

シャンプーとリンスの詰め替えが二つずつに歯ブラシを家族分、、トイレの消臭剤と虫さされの薬と綿棒とゴキブリホイホイ・・。
メモに書かれた商品を全て籠に入れたのを確認して、レジに向かった。

店内は確かに涼しいけど・・・人の多さにイライラとしてしまう。
ああ、さっさと買物をすませて棒アイスをかじりながら家に戻ってゲームの続きしてぇー・・。
と考えながらもレジに並ぶ人の列の長さを見て「・・・げろ。マジ無理。」と、三郎は大きなため息を零した。

もう少しレジの列数がはけるまで人の少ない場所で時間を潰そうと、普段は足を踏み入れない化粧品コーナーまで歩いていった。

するとその一角の隅で、甘やかな亜麻色が三郎の視線を繋ぎとめた。

―――その亜麻色の正体は、柔らかそうに揺れるふわふわのポニーテ―ル、、


「(そうだ、見間違いがない!!)

・・・・・あれは“不破さん”だ!」

ふわふわのポニーテールの主を三郎は同じクラスの“不破雷蔵”だと瞬時に判断し、まるで乙女のごとくに甘酸っぱくもドキドキ胸を高鳴らせながら、背をこちらに向けてしゃがんで何かを選んでいる彼女へとそっと後ろから近づいた。

彼女の視線の先を覗きこむと、成る程。どうやら彼女はネイルカラー選びをしているみたいだ。
左手にうすいピンクを、右手に淡いホワイトのネイル瓶を持ち「・・・・どっちがいいかなぁ?」と小さな独り言を零しながら迷っている彼女があんまり可愛らしかったもので、思わず声をかけてしまった。






「どっちもかわいい色だね、、。」

「え・・・?」

パッと振り向いた不破さんの顔はちょっとだけビックリしてたけれど、声をかけたのがクラスメイトである自分だと気付くと「わぁ、鉢屋君だったんだ!びっくりしちゃった、、。鉢屋君もお買物?ふふ、こんにちは!」といつも教室で見るのと同じ優しい笑みを浮かべてくれた。

「う、うん、買物。親に頼まれて・・。不破さんは、その・・、一人・・?」

「うん、さっきまで図書室に行ってたんだ。ちょっと欲しいものがあったから寄り道でここに、ね。」

不破さんは照れくさそうにはにかみながら、両手に握られた小さなネイル瓶をかざした。
ピンクとホワイト、先ほども思ったが、彼女が好みそうな柔らかな色合いだ。

「・・・・不破さんもネイルとかするんだね。・・っあ、いや、その、いつも爪は綺麗にしてるけど何か塗ってるのみた事ないから・・!!意外と言うか、その、えーっと・・・!!」

ああもう、何を言ってんだ私は・・!!。
いつもって・・、、そんなに不破さんの事を細かく見てるのか!!って突っ込みを入れられそうなストーカーまがいな発言をつい、してしまった。

けれど不破さんは私の発言に眉を顰めることもなく笑顔で返してくれた。

「うん、えっとね・・、友達がね『もうすぐ夏休みだから休みの間くらいはネイルとかすればいいのに』って言ってたから、思い切ってチャレンジしようかと思って。」

「そうだったんだ・・。」

「でも、何色がいいか迷っちゃって・・。こういうのって何種類もあるから決めるのが難しいねぇ・・・、、」

そんな困ったようにへにゃりと眉を下げる不破さんのその表情も本当に可愛いくて、笑顔とまた違った魅力で私のハートをトロトロに溶かす。
それは真夏の太陽のように“灼熱”という表現がピッタリなのだ。ああ、もう、どうしてどうして、、・・・!!!!

休日にこんな場所で想い人である彼女に会えた喜びと親しげに会話をしているという現状に酔いしれ、私は次に、大胆な行動を取ってしまった。


「――不破さんなら、この色もよく似合うと思うんだけどな。」


ひょいとかがみ込んで手にしたネイル瓶を彼女の手の平に乗せた。
それは、まるで夏の空みたいに鮮やかな蒼色に、キラキラとした銀色のラメの入った派手なネイルカラー。
彼女が手にしている二つのカラーとはてんで間逆の色合いだけど、本心で彼女に似合うと思って手にしたのだ。

不破さんはじぃっ、とラメの煌めくその蒼色を見詰め、



「・・・・・・すごく綺麗。」


そう満面の笑みでキラキラと瞳を瞬かせた。


そんな彼女があまりに眩しすぎて、それ以上傍にいると熱があがりすぎて倒れてしまう・・!!と危惧し「じゃ、じゃあ、さよならっ・・!!」とその場から逃げるようにレジへ走り向かった。ラッキーなのかどうなのかレジの列はいつの間にか引いており、会計を済ませると荷物の重さを忘れて家に走り急いだ。


・・・・・熱の収まらない私の頭の中は、不破さんの笑顔でギュウギュウ詰めだった。




――翌々日の月曜日、教室に入ると窓際でクラスメイトと楽しそうにおしゃべりをしている不破さんが真っ先に目に入った。

やっぱり、あの笑顔はいい。いつだって格別だ。
あまりに見すぎていたせいなのかこちらの視線に気付いたようで、不破さんと目が合わさってしまった。うろたえる私に反し、不破さんはいつもと変わらぬ柔らかな笑みを湛えている。


「(か、可愛い・・・・っ!!。)」


不破さんの笑顔に見惚れてポーっとしていると、なんと当人の不破さんがトテトテとこちらへとやって来た。
突然の事に固まる私へと不破さんはまるで内緒話をするみたいに口元に手を添え、小さな声で話し始めた。


「・・・あのね、一昨日はありがとう。」

「へ・・・?」

「ずっと迷ってたから助かったんだ。だからね、鉢屋君が選んでくれたネイルを買ったの。」

「えっ・・・・・!!」

「僕には派手かもしれないけど、すごく綺麗だったし鉢屋君が“似合う”って言ってくれたから・・。ふふふ、実はもう足の爪に塗ってるんだ。」

「!!!!」


―――吸った息が吐けない。言葉が出ない。
彼女の発言に、行動に、、心臓がギュウと握り潰されそうだ。
なんと言えばいいのか、いつもはよく回る筈の思考回路が今はオーバーヒート、、てんでポンコツだ。

何か言わねば、、と焦る私を他所に不破さんは「それじゃあ、、」と友達の所へと戻って行ってしまった。
不破さんの後ろ姿を見詰めながら、すらりとした白い足を包みこむ黒のハイソックスの中の蒼色に飾られた素足が簡単に想像できた。






・・・・始業のチャイムにまぎれてゴクリ、、と喉が鳴った。



(中学生日記な鉢→♀雷)
(・w・*)可愛い女の子のペディキュアって萌える・・。

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