中編色々
□なみだのうみでネコはなやむ
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抱きしめたいと思った、心から。
触れてみたいと思った、心から。
だけど私は貴方にとって『ネコ』で、『私』じゃなくて。
初めて枕を濡らしたのは、この恋の辛さを知った日でした。
『 なみだのうみでネコはなやむ 』
毎日、毎日、同じ空間で同じ事をしているのに。
ネコではない本当の私と貴方が視線を交わす事は無い。
ただ貴方と視線を交わし、言葉を交わせるのは私が『ネコ』であるときだけだった。
教室の片隅で私は今日も貴方を見つめた。
退屈な魔法史の授業は、一瞬でときめきに変わる。
廊下を歩くその背中に、声を掛けたくて。
でもかけられるはずがない。
一体、なんと声を掛ければいいというの?
これが恋だと気付いても、ネコじゃない時の私には、声を掛ける事すらできないの。
だから私は、今日も姿を変える。
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