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□帰り道
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両片思い古キョン









隣に歩く彼の姿が目の端に映る。
足音。
息遣い。
酷く意識してしまう。
「・・・・っ」
「あ、悪い」
偶然触れた手。
一瞬だけで彼の手のぬくもりが僕の手に伝わってきた。
心臓が跳ね、身体が呼吸を忘れたのかと思った。
彼の体温さえ、愛しい。
そんな事を思いながら彼の隣を歩くことが、酷く罪深い事だと思いながらも、この瞬間を幸せだと感じてしまう。
そんな矛盾を抱えたまま、僕は彼の隣を歩いていく。
そんな、帰り道。











◇◇◇




隣を歩く古泉をどうしても意識してしまう、乙女みたいな俺はおかしいのだろうか。
ふと目の端に映る横顔。
息遣い。
酷く意識してしまう俺は、おかしくなったのかと思う。
いや、こんなことを考えている時点で俺はおかしいのだろう。
「あ、悪い」
「・・・・っ」
偶然触れた手。
びくりと、古泉が驚いたのを感じて俺は何でも無いような顏をした。何でもない。こんなことは何でもないのだと。
不意に彼の名を呼んでしまった。
「何だ?」
彼は、こちらを向かずに返事をしてきた。
不自然に横を向いたまま、僕の方を見ようとはしない。
「・・・・」
何でもありません。
そう答えようとしたが、答えられなかった。
もう、僕らの帰路の分かれ道に来てしまったのだ。
「・・・・キョン君」
歩くたび、一歩一歩足を進めるたびに別れの寂しさが募る帰り道。
「また、明日お会いしましょう」
溢れだす想いを伝えるには、その道のりは短すぎた。







好きだよと
今日も言えないまま
見送った 今まで一緒にいたのに
会いたくて
君の好きなうたを繰り返し
口ずさんだ 帰り道





*終わり*


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