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□call me
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僕は、どうしようもない罪を犯したのです。
だからこそ、名前を呼ぶだけ。
なんでもない、と済ませたとしても、彼の名前を呼ぶだけで僕は満足していた。
彼の名前を呼び、面倒そうな顔をしながらも彼が僕の声に答える。
名前を呼ぶたび、僕は彼に対する罪を深くしていった。
今日も名前を呼んだ。
しかし。
今日は彼も僕を呼んだ。
「古泉、」
僕は動揺した。あまりの動揺に、笑顔を忘れてると言われたが直す事なんてできない。
だからこそ、僕は黙り込んだ。
沈黙が悲しい。
彼の声に答えたい。
それでも、僕は答えられない。
僕は、罪を犯したのだから。
「古泉、」
もう一度呼ばれる。
心臓が跳ね、体温が上がり、どうしようもなく嬉しかったが、僕は答えるわけにはいかない。そうして、黙っていた。
すると、彼は何も言わずに長机の上のオセロ盤を片付け始めた。
彼は、部室から出ていくつもりなのだろう。
彼が出ていく。
僕が、彼の事を拒絶したのだと勘違いしたままに。
それが、僕への罰なのだろうか。
何も言えない僕への罰か。
「・・・・・・・」
沈黙の中の、かちゃかちゃというオセロの駒のぶつかる音が僕を酷く悲しくさせた。
僕は、彼に誤解されたまま罪を重ねていくのか。
そんな事は受け入れられない。
僕は、彼に誤解をされたまま、僕が彼を拒絶してるなんて思われたままに罪を重ねるなんていうことは嫌だ。
自分でも勝手だと思う。
しかし、それだけは。
「・・・っ、キョン君」
顏を上げた瞬間の彼は、酷く悲しそうな顏をしていた。





     ◇◇◇


「・・・・っキョン君」
時が止まったかと思った。
俺は、突然顏を上げた古泉に、床に張り倒された。
がたん、と机と椅子が揺れる。
学校の備品を壊す気か、と思って顏を上げると、そこには情けなく仰向けになって床と仲良くしている俺の上に乗っかる、情けない顏をした古泉が居た。
その顏を見て、俺はどうしようもなく嬉しかった。
「・・・っ、キョン君」
「何だ?」
「・・・・僕は、誰にも言えない罪を犯しました・・・かみさまも許してくれません」
「神様が許してくれない?」
「はい・・・・かみさまの大事なものを奪う罪なのです」
「だから何だ?神様が許してくれないっていうことはそんなに大事なのか?」
「・・・・・・・」
「だったら、退け。俺は神様なんか怖くない」
「・・・・・・・」
「お前は、神様の為に口を閉ざすのか?そんなお前の言葉なんか聞きたくない」
「・・・・・・っ」

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