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□花廓
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「・・・・話しても良いんですか?こんな話をしていてもつまらないですよ」
「いいえ、話してください」
「・・・・やっぱり、今日の主様は変わった人ですね」
「そうですか。良く言われます」





笑い合うのが心地いい。
この主様には何でも話せる様な気がした。




「ここ、花廓には・・・遊郭と同じで身請け制度があるんです」
「身請け・・・お金を払えばその遊女が買える、ということですか?」
「はい。先日、俺・・・じゃない私は」
「普段通りで良いですよ?」
「・・はい。先日俺は、その・・・ある人に身請けされたんです」
「・・・ということは、身請けをされた身でありながらこうしてまだ身を売らなければならない自分が悲しい、と?」
「いえ!そんな・・・」
「では、どうしてですか?身請けとは、本来自由になるという事ではないのですか?」
「・・・本来、なら」
「話してください。僕は、それを聞きたい」
「・・・・はい。俺の身請けをしてくださる方は、とても・・・厳しい方なんです。だから・・・・・」
「だから?」
「・・・・俺は、もう一生自由にはなれないんです」
「・・・・・・」
「俺は、この花廓で一番年齢のいった色子です。もう17歳になりました。この年齢で、身請けされるのも珍しいんです・・・・だから、俺はその方の申し出を断れないんです。この方法でしかこの花廓に恩返しが出来ないんです」
「恩?身売りをしなくてはならないのにですか?」
「・・・はい。それは仕方のない事ですから」


悲しく笑った彼の表情は、窓から見た時よりも胸を締め付けるものだった。



「この花廓の店主のおばさんは、凄く俺たちに優しいんです。俺よりも年下の奴らしか居ないから・・・だから、俺がこの花廓に迷惑かけるわけにはいかないんです」
「では・・・・」
「はい?」
「どうして泣いていたんですか?」
「・・・・・それは・・・」
「厳しい方、ですか・・・」
「もうこの話はやめてください。貴方と居ると・・・決心が揺らぎそう、です」
「・・・分かりました」






そのあとは、僕が帰らなくてはいけない時間になってしまって彼と別れた。
寂しそうな笑顔が、目に浮かぶ。
彼を守ってあげたいと思った。






    ◇◇◇




「キョン・・・お客様よ」
「誰?昨日の・・・」
「・・・庵条様よ」
「・・・・・・」
「キョン、嫌なら・・・」
「いや、大丈夫。行ってくる」
「・・・・そう」



ああ、今日もこの時間がやって来た。
地獄よりも暗い時が。






「・・・失礼します、」
「遅い!何をやっているんだ貴様は」
「・・・も、申し訳ございません、庵条様」
「まあ・・良い。早く座れ」
「・・・・はい」
「お前はそうして、俺に足を開いていれば良いんだ」





 
殺してやりたいぐらいに憎い。
「・・・・っ、ひ、!ぁ、ぐ」
「何だ、首を絞めると中も締まるのか?とんだ淫乱だな!」
「・・・っ、すみま、せ・・・っ、ひ!」
ぐい、と足首を掴まれ、ぐったりとした身体を反転させられる。その時に中も反転する為、中が摩れて変な声が出た。
そして、庵条様が俺の足首だけを掴んで腰を上げさせた。
「お前が家に来たら・・・そうだな。まず、この足に足枷を付けてやろう」
「・・・・っ、う、ぐ、ぁ!っ、」
「首を絞められるのが好きみたいだな。だったら、きつい鎖でも巻きつけて地下牢に入れてやろう」
そう言いながら、楽しそうな目で俺に腰をぶつける様にして庵条様は俺を犯す。
引き攣る喉。
掴まれて赤くなる足首。
絞められて指の痕が残る首。
死にたい。
こんなことをするならば、いっそ殺してくれたら良いのにと何度思った事か。
「何だ?その目は」
「・・・っ、う・・・・」
「そんな反抗的な目で見るなら、こんな店潰してやっても良いんだぞ?お前も、仲間も、ここの女主もみんな飢え死ぬだろうがな!」
「・・・・っ、そ、」
そんな事は絶対に嫌だ。
俺はどうなっても構わない。
でも、どうか俺に優しくしてくれたみんなだけは。
自由を夢見て生きていて。





「お前は、俺が作った籠からは絶対に逃げられない様にして地下に繋いでおいてやる。愚かな性具としてな!ほら、もっと腰を動かせ!」
「・・・・・っ、ひ、ぐぁ!」





ああ、もう夢は見たくない。
俺の目に映るのは、ただ一人。
あの人が俺の主様なら良いのに。
そんな幻想は抱きたくもない。





それでも、一目だけでも会いたいなんて思いながら、俺は眦から涙を一筋流した。

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