Sweet Room2
□抜け出したい関係(♂亀×田)
1ページ/5ページ
人が仲良くなること、それはすごくいいこと。
やけど、れなは思う。
近くにおる人ほど、その人のことを分からんのやって…。
バリ近くにおるって事実があっても、その人のことを自分以外の人よりも知らんってこともある。
…そう、まさに、今のれなみたいに。
「はぁー?!」
「わわっ、急に大声出さないでよぉ;」
「あ…ごめん;」
声を出さずにはおれんかった。
やって…やって…。
「…んなわけ、ないって…」
「だって…これが事実なんだから。」
頭を抱えた。
机の上にある一枚の紙に、れなの頭はぐらんぐらんゆすられる。
その紙はただの紙じゃない。
いわゆる、校内新聞ってやつで。
その一面に、れなは大いに悩まされよった。
「しっかし…学園一のアイドルとはなぁ…」
「あ、愛ちゃん。」
「うー…;」
机に置かれた新聞を乱暴に奪い取って、はぁっと感嘆を漏らしながらそれを眺めるのは、れなの目の前におる親友、垣さんの彼氏の愛ちゃんやった。
「そういや、ちょっと前までは愛ちゃんだったよね、アイドルは。」
「おー、そうやったのぉ。ま、里沙ちゃんが彼女になってからは絵里に交代したけどの。」
新聞片手に少し前のことを語り合う二人。
…いやいや、あの、れなはそれどころじゃないんですって。
一面に写っとぉ、さわやかっていうんやろうか、れなから見ればふにゃっとした笑顔を浮かべとぉ男子。
こいつが、れなの幼馴染で、今現在、学園一のアイドルと称される亀井絵里。
…こいつのせいで、れなは大いに悩んでいるのです。
「どれどれ…はー、こいつ、2位に100票も差つけとるがし。圧倒的やなぁ。」
「でも、その2位は愛ちゃんでしょ?すごいじゃん。」
「んふ〜、いまだに俺はアイドルやでぇw」
「…ふん。」
何がアイドルよ。
どこがアイドルなん、あのアホの。
れなたちの通いよぉ学校では、3ヶ月に一回、校内新聞が発行される。
その新聞での企画に、学園一のアイドルは誰だ!とかいうのがあって。
学校で一番かっこよくて優しくて、彼氏にしたい男子に投票せんといかんと。
…なんでしたくもないのにこんな企画に参加せんといかんとよ…。
「で、れーなは誰に入れたんや?」
「…へ?」
「だって、これ、強制参加じゃん。誰に入れたのよ。」
「あ…それは…;」
うー…なんであの企画、強制参加なんやろ。
投票用紙が回ってきたとき、集計する人に“これって絶対書かんといかんと?”って聞いたら“絶対です!”って言い切られて…。
だけん、誰かしらの名前は書かんといかんかったわけで…。
「で、誰なんや?まさかの俺w?」
「なわけないでしょ。カメに入れたんだよね?」
「…まぁ、れな、そんなに顔広くないし。」
「あひゃ〜、やっぱ絵里に気があるんやざw」
「違うったい!!」
バンッと机を叩いて身を乗り出す。
そう…れなは、あんなアホ…好きやないもん。
ただの幼馴染ってやつ。
ちっちゃい頃から一緒におる…そ、そうったい!
お兄ちゃん的存在なわけ!!
「やってさぁ、れーな。この企画の趣旨、知っとるんか?」
「…どーゆーこと?」
「やからこの企画は、自分が一番“かっこよく”て“優しく”て“彼氏にしたい”って思う男子を選ぶっていう企画なんやで?」
「…だけん、それが何よ?」
「要するにれーなは、絵里が“かっこよく”て“優しく”て“彼氏にしたい”って思う男子なわけやろ?」
…愛ちゃん、一発殴ってもいいかいな?
女子とか男子とか関係なしにさ。
しょうがなく書いたって言いよぉやろ?
ニヤニヤして、かっこよくとか優しくとか、変な部分ばっか強調してしゃべってきよぉし。
「絵里はぜんぜん、そんなんに当てはまらんったい。」
「かっこえぇやんか。」
「アヒル口するし。」
「優しいやざ。」
「アホなだけ。」
「彼氏にしたくないんか?」
「いらん。」
愛ちゃんが“絵里は相当嫌われとるなぁ”ってつぶやく。
…別に、嫌っとぉわけでもないけど。
本当にアイツは幼馴染。れなのお兄ちゃんみたいな人。
…ただ、ひとつだけ自分でも分からんことがある。
こうやって絵里が学園一とか言われよぉのが…なんていうか、腹が立つ。
イラッとする。
…なんで?あいつは別に、ただの幼馴染やのに…。
「ま、田中っち、そんなにイライラしないの。」
「そうやざ。イライラしたってなにもな「きゃーっ!!」
…イライラせんほうがムリやっての。
頬杖ついてぶすくれた顔しとったれなは、そんな黄色い歓声が上がった瞬間、その顔を机に押し付けた。
「亀井君だよ!亀井君!!」
「ど、どうしよ…今日、メイク適当なんだけどっ…」
「あ、こっち来るよ!」
毎朝毎朝、こんなん疲れるったい。
こっち来るよって…そりゃ、絵里はこのクラスなんやけん、来てもおかしくないっちゃろ?
たかが一人の男子に、何でそんなに盛り上がれると?
「おはよう、亀井君!」
「あ…うん、おはよぉ。」
「寝不足なの?」
「んー…逆かな。寝すぎて眠い。」
絵里がふにゃって笑って言えば、女子たちは“きゃー、可愛い!”とか騒ぎよって。
…ただのだらしないやつやんか。
どこが可愛いとよ。
「…俺はあんなにちやほやされたことないがし。」
「いいじゃない。愛ちゃんは近づきづらい雰囲気出てたし。」
「そぉか?まぁ、垣さんにべったりやったから、近づこうにも近づけんかったんかのw」
「あー、そうかもねぇ。」
垣さんに超ニヤけ顔で話しかける愛ちゃんと、適当にあしらう垣さん。
…あー、もう、そういうお熱い話は別の場所でやってくれませんかね…。