Sweet Room2

□抜け出したい関係(♂亀×田)
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人が仲良くなること、それはすごくいいこと。
やけど、れなは思う。

近くにおる人ほど、その人のことを分からんのやって…。
バリ近くにおるって事実があっても、その人のことを自分以外の人よりも知らんってこともある。

…そう、まさに、今のれなみたいに。


「はぁー?!」

「わわっ、急に大声出さないでよぉ;」

「あ…ごめん;」


声を出さずにはおれんかった。
やって…やって…。


「…んなわけ、ないって…」

「だって…これが事実なんだから。」


頭を抱えた。
机の上にある一枚の紙に、れなの頭はぐらんぐらんゆすられる。

その紙はただの紙じゃない。
いわゆる、校内新聞ってやつで。
その一面に、れなは大いに悩まされよった。


「しっかし…学園一のアイドルとはなぁ…」

「あ、愛ちゃん。」

「うー…;」


机に置かれた新聞を乱暴に奪い取って、はぁっと感嘆を漏らしながらそれを眺めるのは、れなの目の前におる親友、垣さんの彼氏の愛ちゃんやった。


「そういや、ちょっと前までは愛ちゃんだったよね、アイドルは。」

「おー、そうやったのぉ。ま、里沙ちゃんが彼女になってからは絵里に交代したけどの。」


新聞片手に少し前のことを語り合う二人。
…いやいや、あの、れなはそれどころじゃないんですって。

一面に写っとぉ、さわやかっていうんやろうか、れなから見ればふにゃっとした笑顔を浮かべとぉ男子。

こいつが、れなの幼馴染で、今現在、学園一のアイドルと称される亀井絵里。
…こいつのせいで、れなは大いに悩んでいるのです。


「どれどれ…はー、こいつ、2位に100票も差つけとるがし。圧倒的やなぁ。」

「でも、その2位は愛ちゃんでしょ?すごいじゃん。」

「んふ〜、いまだに俺はアイドルやでぇw」

「…ふん。」


何がアイドルよ。
どこがアイドルなん、あのアホの。

れなたちの通いよぉ学校では、3ヶ月に一回、校内新聞が発行される。
その新聞での企画に、学園一のアイドルは誰だ!とかいうのがあって。
学校で一番かっこよくて優しくて、彼氏にしたい男子に投票せんといかんと。

…なんでしたくもないのにこんな企画に参加せんといかんとよ…。


「で、れーなは誰に入れたんや?」

「…へ?」

「だって、これ、強制参加じゃん。誰に入れたのよ。」

「あ…それは…;」


うー…なんであの企画、強制参加なんやろ。
投票用紙が回ってきたとき、集計する人に“これって絶対書かんといかんと?”って聞いたら“絶対です!”って言い切られて…。
だけん、誰かしらの名前は書かんといかんかったわけで…。


「で、誰なんや?まさかの俺w?」

「なわけないでしょ。カメに入れたんだよね?」

「…まぁ、れな、そんなに顔広くないし。」

「あひゃ〜、やっぱ絵里に気があるんやざw」

「違うったい!!」


バンッと机を叩いて身を乗り出す。
そう…れなは、あんなアホ…好きやないもん。
ただの幼馴染ってやつ。

ちっちゃい頃から一緒におる…そ、そうったい!
お兄ちゃん的存在なわけ!!


「やってさぁ、れーな。この企画の趣旨、知っとるんか?」

「…どーゆーこと?」

「やからこの企画は、自分が一番“かっこよく”て“優しく”て“彼氏にしたい”って思う男子を選ぶっていう企画なんやで?」

「…だけん、それが何よ?」

「要するにれーなは、絵里が“かっこよく”て“優しく”て“彼氏にしたい”って思う男子なわけやろ?」


…愛ちゃん、一発殴ってもいいかいな?
女子とか男子とか関係なしにさ。
しょうがなく書いたって言いよぉやろ?

ニヤニヤして、かっこよくとか優しくとか、変な部分ばっか強調してしゃべってきよぉし。


「絵里はぜんぜん、そんなんに当てはまらんったい。」

「かっこえぇやんか。」

「アヒル口するし。」

「優しいやざ。」

「アホなだけ。」

「彼氏にしたくないんか?」

「いらん。」


愛ちゃんが“絵里は相当嫌われとるなぁ”ってつぶやく。
…別に、嫌っとぉわけでもないけど。
本当にアイツは幼馴染。れなのお兄ちゃんみたいな人。

…ただ、ひとつだけ自分でも分からんことがある。
こうやって絵里が学園一とか言われよぉのが…なんていうか、腹が立つ。
イラッとする。

…なんで?あいつは別に、ただの幼馴染やのに…。


「ま、田中っち、そんなにイライラしないの。」

「そうやざ。イライラしたってなにもな「きゃーっ!!」


…イライラせんほうがムリやっての。
頬杖ついてぶすくれた顔しとったれなは、そんな黄色い歓声が上がった瞬間、その顔を机に押し付けた。


「亀井君だよ!亀井君!!」

「ど、どうしよ…今日、メイク適当なんだけどっ…」

「あ、こっち来るよ!」


毎朝毎朝、こんなん疲れるったい。
こっち来るよって…そりゃ、絵里はこのクラスなんやけん、来てもおかしくないっちゃろ?
たかが一人の男子に、何でそんなに盛り上がれると?


「おはよう、亀井君!」

「あ…うん、おはよぉ。」

「寝不足なの?」

「んー…逆かな。寝すぎて眠い。」


絵里がふにゃって笑って言えば、女子たちは“きゃー、可愛い!”とか騒ぎよって。
…ただのだらしないやつやんか。
どこが可愛いとよ。


「…俺はあんなにちやほやされたことないがし。」

「いいじゃない。愛ちゃんは近づきづらい雰囲気出てたし。」

「そぉか?まぁ、垣さんにべったりやったから、近づこうにも近づけんかったんかのw」

「あー、そうかもねぇ。」


垣さんに超ニヤけ顔で話しかける愛ちゃんと、適当にあしらう垣さん。
…あー、もう、そういうお熱い話は別の場所でやってくれませんかね…。

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