Collabo Room

□PANIC LOVE!?(♂田×亀)*10話*ウィン
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あの時―そう、俺が、吉澤さんと美貴兄ぃに初めて出会ったときのこと。

誰ともなじめず、まさに一匹狼やった俺。
学校になんてまともに通わず、毎日ぶらぶらと当てもなくさまよい歩いて。

…そんな日々の中の、ある日のことやった。


ガツッ。


肩がぶつかった、誰かと。
いってぇ…とか思って、文句の一つでも言ってやろうかと振り向けば、まぁ、俺以上に凄みを利かせた兄ちゃんたちで。


「おぃ、ごるぁ。人様の肩にぶつかってくるたぁどういう了見だ?」


…ぶつかってきたん、そっちやろうが。
俺も悪いかもしれんけど。

一方的に俺が悪者にされたけん、ムカついたけど。
下手に騒ぎを起こすんもよくない。
だけん、そっけなく。


「…悪ぃ」


それだけ言ってその場を去ろうとした。
背を向けて踏み出すと、襟首をぐっとつかまれて。


「…んだぁ、その態度は?」

「…謝ったんやけど。」

「てめぇ、俺を誰だと思ってやがんだ?」


そいつの顔をにらんでやったけど、誰かなんてわかるわけもない。
“お前なんかしらん”って言ってやったら。


「…舐めてんのかテメェ!」


やっぱり手を上げてきた。

…結局は暴力か。

俺はキレイにそのこぶしを交わして反撃しようとした。

…そう、その当時の俺は無鉄砲で。
どんな奴らにも一人で向かっていった。

だけん、知らんかったと。
力よりも数が勝ってしまうときがあるっていうんを…。


「は、口だけだな、テメェ!」

「っ…うぐっ…」


反撃しようとした手をうまく取られて、俺は地面に押し付けられて。
身動きの取れんなった俺は、ただただ相手の攻撃を受けるばかりで。

…情けない、そう何度も思った。
そんなとき。

ゴスッ…バタッ…。


「…え…?」

「…おい、ここ、俺らの縄張りだから。」


相手のグループの一人を、こぶし一発で気絶させた一人の男。
細身で長身。モデルのような整った顔立ちの男。
けど、どこか、相手をひるませるような雰囲気に包まれとって。
正直、俺も背筋が凍った。


「あ、あんだよ、てめぇ。やろうってのか?」


グループの一人が食って掛かる。
向かってくるものをただ見つめていたその人は。

すっ…ドスッ…。


「うっ…ぐ、ぁ…」


いとも簡単に攻撃を交わし、相手の背中に強烈なけりを食らわせた。
またも一発KO。

…あの人、バリ強い。
俺がそう感じたのと同様に、周りのやつらもそう思ったらしく。


「…おい、行こうぜ。」


気絶した奴らをそのままに、残りの奴らは足早にその場を去った。

…助かった…。


「あー、よっちゃん!美貴の獲物残しといてよ。」

「わりぃわりぃ。なんか、逃げてったからさ。」

「美貴も久々に暴れたかったんだけど。」


俺が起き上がると、長身の男の人の横には、これまた顔立ちの整った男。
けど、ちょっと目つきがキツイ。


「?…誰、あいつ。」

「…さぁ。」


その目つきのキツイ人と目が合ってしまった俺。
誰?って…そりゃ、俺んこと知っとぉワケないっちゃね。

…ってか、えと。
何気に俺、あの人に、助けられた…んよね?


「…あ、あのっ…」


ぱんぱんとズボンの埃を払うその人にお礼を言おうと口を開いたら、その人は。


「…お前、弱いのな。」


って笑われた。
よ、弱いって…。

感謝の気持ちがその瞬間に消え失せて、一気に怒りがこみあげてきて。


「何言いよぉと?!」


って怒鳴った。
その人はタバコに火をつけてふーっと一息ついて。


「あんなくだらねぇ連中、一人でなんとか片せらんねぇの?」

「…うっ…」


バカにされとぉってのがありありと感じられる。
けど、反論はできん。事実やけん。

言葉に困っとぉ俺に、長身の人の後ろから目つきのキツイ人が。


「よっちゃん、ほっとこ。それより、早く飯行こうよ。」

「…そうだな。」


どうやら昼飯前やったみたいで。
長身の人をせかして、二人は飯を食いに行くようで。

いかん…このままやと、俺…バカにされたままで終わる。
そんなん…俺のプライドが許さん…。

この人らみたいに強く…いや、この人ら以上に強くなりたいっ…!
バカにされんぐらい、強くっ…!!


「待ってください!」


俺は走って、二人の前に回り込む。
心底迷惑そうな表情をする二人の目の前に立ち…そして、膝をついた。


「俺を…強くしてくださいっ!」

「…は?」

「…何言ってんの、お前。」


頭上から浴びせられる冷たい声。
やけど、引き下がれん。

俺は額を地面に押し付け、懇願した。


「俺、ホントは臆病で、へたれで…ケンカとかバリ弱くて…一人の男として、強くなりたいんですっ!!」


大きな声で叫んで言う。しばらくの沈黙。

…やっぱ、ダメか…。


「…ははっ…」

「…え?」

「お前、面白いな。すげぇカミングアウトじゃん。」

「あ…」


長身の人は静かに笑い、目つきのキツイ人は腹を抱えて大笑い。

…な、何で、笑われとぉと?


「自分のこと、そんな風にカミングアウトしてくるとか…マジウケる。」

「なっ…お、俺は!」


冗談とかで言っとぉわけじゃないし!本気で俺…。
言い返そうと口を開いたら。


「ついてきな。」

「え?」


長身の人が、まっすぐに俺を見て言った。
ついてきな、って…。


「お前、気に入った。ただの弱虫かと思ったけど…なんか、ただの弱虫じゃないっぽいし。」

「…はぁ。」


なんか…あんまり、褒められてないよな?てか、バカにされとぉ?
でも、気に入ったって言われるし…。
ワケ分からん。


「俺は吉澤ひとみ。こっちは藤本美貴。よろしくな。」

「…あ、はい…」


手を差し出されて、俺はぱっとその手を握り返す。

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