Collabo Room

□PANIC LOVE!?(♂田×亀)*4話*ウィン
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れなの手の中でガチャガチャと音を立てるドアノブ。

…なんで?なんで、開いてないとよ?


「…とりあえず、入ってみるか。」


ポケットから鍵を取り出して扉を開く。
音を立てて開いた扉から見える玄関には、靴がなかった。
つまり…絵里は、おらんってことか…。


「…まさか、おらんなった?」


突然人の家に上がりこんで、嫁みたいに振舞って俺の相手して。
そんなやつが、急に姿を消した?
…おかしく、ないか?


「…でも…」


落ち着いて考えろ、れな。
あいつは…絵里は、元々はこの家の人間じゃない。

いきなりやってきた変なやつなんよ?
そいつがおらんなったってことは…。


「喜ぶ、べき…?」


絵里のせいで頭を悩まされたのは事実。
その悩みの種がおらんなったってことは、れなは喜ぶってのが普通の考えなんやけど…なんなんやろ、喜べんし。


「…てか、自分の家とかに帰った、とかやないと?」


そうよね。
よく考えれば、絵里にも自分の家とかあるはずやん?(分からんけどさ)

やったら、俺の家に上がりこんどったんは一時のことで、もう家に帰ったとか。
それやったら、俺が変に悩む必要はない。
…よね?


「…あーっ!!!」


玄関で悶々と考えた俺は叫び声を上げた。
手に持っとったかばんを玄関先に乱暴に放り投げて、俺は家を飛び出した。
…何しよんやろ、俺。





「…はぁ…しんど…;」


衝動に駆られて家を飛び出したはいいものの、自分でも何をしていいか分かってない俺。
…えっと、俺は…。


「…絵里、探してやらんと…」


悩んだ挙句、絵里を探すという結論に達して。
別にほっとけばいいやんって、とかいう考えが何度もよぎるものの、れなにはその考えはできんかった。


「どこにおると…?」


いつもは田舎やけん狭くて居心地が悪いっちゃん!とか愚痴を言いよったっちゃけど、やっぱり町って広いっちゃねって思わざるをえん。
…何か、手がかりでもあればいいんやけど…。


「…まだ昼やね…」


学校を出たんが朝やったけん、ちょうど今は昼で。
太陽が真上にある。

…せめて、夕方までには見つけたい。
流れる汗をぐっとぬぐって、れなは足を進めた。

…絵里、遠くになんか、行っとらんよね…?





「あーっ!!どこにおるとよーっ!!」


もうどれくらい走ったっちゃろ。
見たことがない風景にまで出くわすぐらい、れなはあちこち走り回った。
でも、どこにも絵里らしき人影は見当たらんくて。


「…あ。」


時間を確かめようと携帯を開いたら、不在着信が何件もあった。
必死すぎて気づかんかった。
調べてみたら、発信者は愛斗で。


「…あ、もしもし。愛斗?」

『お前は何回電話かけたら出るんじゃーっ!!』


…ものすごい怒鳴られた。
耳がキンキンするったい…;
じーんとする耳をさすってから、もう一度電話に耳をつける。


「…気づかんかったとよ。ちょっと忙しくて。」

『あ?忙しい?なんやの、うわさのお嫁さんの絵里さんはどうしたんや?』

「…おらん。」

『…は?』

「だけん!おらんなったと!!」


若干(いや、結構)イライラしとった俺は、何の罪もない愛斗に向かって大声で叫んだ。
おかげで少しスッキリしたっちゃけどね。


『…急に叫ぶな、ぼけぇ。耳が痛いやざ。』

「うっさい。とにかく、今は取り込み中なんやけん。」


今は電話しよぉときやない。
特に重大な用事がないんやったら、もう電話する必要はないし。
切ろうと思ってボタンに指を当てた瞬間。


『少しは落ち着けや、れーな。』


やけに大人びた口調で愛斗が言った。
自然と、ボタンから指が離れていく。

…なんよ。
落ち着けって…結構落ち着いとぉつもりなんやけど…。


『よく考えろ、れーな。その、絵里さん?お前の嫁やないやろ?』

「…まぁ。」

『勝手にそう言いよるだけやろが。出て行ったんは、もう用事がなくなったからやないんか?』

「用事ってなんよ?」

『…そんなん、俺に聞かれても。とにかく、絵里さんは、お前の家におる必要がないから出たんや。そうやろ?』


愛斗の意見は正しい。
絵里はれなの嫁みたいに振舞うけど、どんなに振舞ったって、俺の嫁じゃないことは事実。

そして、絵里が出て行ったんは、もうれなの家におる必要がなかったけん。
…確かに、そう考えれるけど。


「…納得、できんし。」

『……』

「なんで、絵里は俺の家に来たん?どうして嫁みたいにしてきたん?急に出て行った意味も分からん!必要がないってなんよ?!」

『…やから、俺に言われても…;』


愛斗を困らせとるっていうんは分かっとった。
でも、そう冷静に考えて自分を抑えるよりも、今の自分の気持ちが前面に押し出された。
…頭の中は、絵里のことだらけ。

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