Song Room

□Memory 青春の光(♂高×新)
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「…よし。」


よく、伝言を書いたりするのに使うメモに、いつもより随分長い文章を書いた。

かなり長いけど…読んでくれるよね?
最後まで…しっかり。

これを書いてるときに気づいたけど、私、一人ぼっちなんだって。
一人ぼっちが、こんなに淋しいんだって。
初めて気づいた。



このメモを書く決心がついたのは、街であなたを見たときだった。


「え〜、垣さん、またですかぁ?」

「何よぉ、またって。いいじゃない。」


仲良しの亀と街を歩いてた。
その日、ホントは愛斗と一緒に買い物のはずだったんだけど。


『ごめん、垣さん。俺、用事ができてしもた。』


愛斗は仕事が忙しいから、あんまり会ったりすることができない。
すっごく楽しみにしてたけど、しょうがない。

だから、私は亀と遊ぶことにしたの。
亀は、私のことよく分かってくれてるから。


「垣さん、あれ、絵里、食べたいなぁ。」

「ん〜?食べてくればぁ?」

「…おごって?」

「しないから。」


ホントは愛斗と買い物したかったなぁって何度も思いながら、亀とのアホなやり取りに付き合う。
ふらふら歩いて、そろそろ疲れてきたなぁとか思ってたときだった。


「…?」


目に入ったのは、見慣れた後ろ姿。

錯覚?って思った。
確信はもてなかった。

でも、何か、雰囲気が似てたから…愛斗と。


「亀、ちょっと。」

「うぇ?」


亀を無理やり引っ張って、その人物に近づく。
近づけば近づくほど、愛斗に見える。

もっと近くで見ないと…って思ってたところに、その人物の横顔が見えた。
それは、間違いなく…。


「…あい、と…」

「へ?」


間違えるはずが無い。
あれは、愛斗だった。

そして、そこでようやく気づいた。
愛斗の隣に、私じゃない女の人がいることに。


「垣さん?どうしたましたぁ?」


いつもと変わらない調子で聞いてくる亀。
どうやら亀は気づいてないみたいで。
私は方向を180度変えて来た道を戻り始めた。


「わわっ…ちょ、垣さん?」

「亀…今日は、もうちょっと遊んで帰ろ?」

「へ?…まぁ、絵里はいいですけど…」


“よく分かんないなぁ、垣さん”とか亀が言ってたけど、自分でもそれは思う。
私、どうしたいんだろ。

あそこで愛斗に一言言えば、何か変わったかもしれないのに。
でも、それができなかった。

愛斗、嘘、ついたんだね、私に…。

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