Song Room

□しょうがない 夢追い人(♂亀×田)
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れなには、高校のときから付き合っとぉ彼氏がおる。
バリ優しくてかっこよくて、れなのこと大事にしてくれとる。
けど…ちょっと困ったところもある。


「絵里、また行くと?」

「ん。今日はいけそうなんだよねぇ。」


一緒に住んどるアパートから出て行く絵里。

絵里には夢がある。
その夢を追いかけて、絵里はれなと一緒に上京した。

けど、その夢はとてつもなくでかくて、正直、叶えられるとは思えん。


「…絵里も、分かっとぉやろ?」


自分の夢が、叶えることができるほど簡単やないって。
いつになったら叶うん、絵里の夢。

これ以上一緒におったら…れなまでダメになってしまいそうっちゃん。


「今日はね、昨日より2人増えたよ!」

「そうなん?」

「うん。あとね、犬と猫もきた。」

「…人やないやん。」


絵里が目指しとるんは、世界をまたにかける超大物アーティスト(本人談)らしい。
だけん、その夢への一歩として、街中でストリートライブっていうんをやりよる。

晩御飯のときにはいっつもその話をしてくれる。


「明日はどれだけ来るかなぁ?」

「増えたらよかよね。」

「あ〜、でも、動物はもういいかな。人間が増えてほしい。」

「にしし。そうやね。」


絵里がストリートライブの話をするときは、少年みたいにキラキラしとる。
絵里のしたいことやっとぉけん、キラキラしとぉよね。

…れなは、キラキラしとぉ絵里の瞳に惹かれたっちゃね。


「よぉし、明日に備えて寝るか。れーな、寝よ?」

「れな、まだ勉強せないかんと。」

「うぇ〜…一緒に寝ないのぉ?」

「先寝とって?」


絵里と違って、れなは大学生になっとぉ。
だけん、勉強せんといかん。

絵里がしぶしぶ一人で寝室に入っていくんを見送って、れなは今日の課題を取り出した。

こつこつ課題をやりながら、れなは思う。
絵里は、きっと時間が過ぎとぉこと、分かってなかよね?
まだ、高校のときの気分でおるっちゃろ?


「…もう、れなたち、大人やけんね…」


確かに、れなは高校のときの絵里も好きっちゃん。
夢を掲げて、その夢にまっしぐらやった絵里の姿が大好きやった。

けど…現実的に考えたら、それは本当に夢やけん。
れなとしては、将来のことをちゃんと考えてほしい。

課題をやり終えて、絵里のおる寝室に入る。
すでに夢の中の絵里のそばにちょこんと座る。


「…気持ちよさそうに寝とぉね。」


れなが、いろいろ考えとるんも知らんで、絵里はすやすや眠っとぉ。
毎晩この寝顔を見るたびに、れなの頭の中に思い出が溢れてきて…自然と涙も溢れてくる。


「…ずっと、絵里とおったら、れな…」


絵里とおるんが一番よかやけど…でも、これ以上絵里とおったら…れなもダメになってしまうと?
そう考えると、絵里と別れたほうがいいんかいな、とか思ってしまう。

でも、何度も考えるけど、そのたびに絵里の笑顔を思い出す。
白い歯を見せて、優しく笑ってくれる顔を。

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