Sweet Room2
□体育祭(♂田×亀)
1ページ/5ページ
雲ひとつない青空のもと、汗を光らせて走る学生たちがそこにいる。
今日は年に一度ある体育祭の日。
炎天下のもと、生徒はみんな、汗が流れるのも気にせず走ったり飛んだり。
そんな中、私、亀井絵里はというと…。
「ふぃ〜、垣さん、あつい〜…」
「こら!サボっちゃだめだから!!」
手にボンボンを持って、高々と振ってます。
…もう分かります?
そうですよ、チアガールってのをやっちゃってるんですよ。
本当はする気なかったんですけどねぇ…。
『亀!私一人じゃ恥ずかしいからお願いっ!!』
…って頼まれちゃいまして。
いやぁ、やっぱ、絵里っていざっていうときに頼りになるんですよ、うへへw
さてさて、怒られちゃったことですし、しっかり応援しますか。
「あ、れーなだ。」
「…もんのすごく嫌そうな顔してない?」
「…そりゃぁ…」
グラウンドを見れば、入場していったのは絵里たちと同じ学年の男子で。
これは徒競走だから…まぁ、足がそこまで速くない人が多いんですよ。
ちなみに、絵里の彼氏のれーなは、非常に走るのが苦手な上に嫌いなもので、今垣さんが言ったように、最悪の表情になってるわけです。
「朝からぶつぶつ文句言ってたよね、そういえば。」
「そうですよ。“どうせビリなん分かっとぉし!絵里、絶対見んなっ!!”って言われましたもん。」
「でも見るんでしょ?」
「だって、勝てなくても走るれーなは格好いいですもんw」
「あ〜、はいはい。」
垣さんが手をしっしと払うように動かす。
なんですか、いいじゃないですか。
格好いいのは本当ですよ?
何人かの生徒が駆け抜けていって、ついにれーなの番が来た。
スタートに着いたれーな。
…やる気ないなぁ、あの体勢は。
パンッてピストルがなっていっせいに走り出す。
最初は前のほうにいたものの…少しずつ抜かれていっちゃって…。
「あ…田中っち…」
「…ビリではないですよ?」
なんとかビリは免れた。
…まぁ、ビリから二番目だけど。
だ、大丈夫ですよ!
なんたってれーなには、とっておきの競技が残ってますから!
「次は…あ、愛斗が出るやつだ。」
「ふぇ?あ、ダンスですか?」
「うん。」
プログラムを見直してると、次は愛ちゃんたちの学年が出るダンスだった。
愛ちゃんはすごいダンスが上手で、かなり有名なんですよ?
「うわ、愛斗、センターじゃん!」
「わー、すごぉい!」
音楽に合わせて飛び出してきた愛ちゃんたち。
みんなが円を描いて、その真ん中に愛ちゃん一人が立って、キレのある動きで踊ってる。すごいなぁ…。
「…愛斗はかっこいいっちゃね…」
「そうだね…?!れ、れーな?!」
ぽけーっと見とれてたら、競技を終えて戻ってきたれーなが、ものすごい不機嫌そうな口調でしゃべって絵里の後ろに立ってた。
「…はぁ。どうせ俺は…」
「れ、れーなだってかっこよかったもん!それに、あの競技ひとつで全部が決まるわけじゃないじゃん!」
「…でも、愛斗はリレーの選手やし、ダンスもできるし、顔もかっこいいし優しいし…」
れーながものすごいネガティブ思考になってる。
…はぁ、去年もこんな感じだったなぁ。
徒競走終わった後のれーな、ものすごく機嫌が悪いの。
もう…。
「ほら、れーな、こっち向いて?」
「なんよ…どうせ…っ…」
絵里を見たれーなのおでこにちゅっとキスをしてあげた。
見る見るうちに顔を真っ赤にしていくれーな。
「うへへ、頑張ったご褒美ですよw?」
「…別に、ご褒美とかいらんし…//」
ぷいっとそっぽを向いて、れーなは日陰のあるテントに戻っていった。
…素直じゃないんだから、ねぇ?