リレー小説

□油断は禁物
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「曽良!」

妹子は少し怒りながら前方の席の少年を呼んだ。

曽良は小さな欠伸をし、「何ですか」と振り返りながら言った。彼が何故少し怒っているのか知っているようで、その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいる。

「今朝は災難でしたね。ヘンリーから聞きました。バナナを盗んだとか何とか。」
「そうなんですよ。あーあ、どうしてこんな事になったんだか…」

妹子ははぁ、と長いため息をつき、また一息置いてからせめて僕が無罪であるとわかればな、といつになく弱々しい声で言った。
と、そこへ、彼をバナナ盗難事件の犯人である証拠を出した太子が二人の目の前を目の前を通りかかった。いつもとは違い、なぜか少し前かがみになっている。

それどころではない妹子は彼を無視しようとしたが、曽良はおうい、と声をかけた。


「太子、大丈夫だったんですか?今朝の。」
「…(今朝…?)」

太子はビクリと大きく肩を揺らし、ふり向くと、ホッとした顔で
「なんだぁ、河合とお芋じゃないか。ビックりさせるなよ」
といつものへらりとした口調で答えた。

「ねえ曽良、太子。今朝バナナの事件以外に何かあったんですか」
妹子は怪訝な顔をして二人に尋ねた。

太子は何か喋ろうとしているが言葉が出てこないらしい。
曽良も少し驚いたという感じでいたが、太子の顔をチラと見てから口をひらいた。

「ええ。学校に来る途中で太子と閻魔が犬を拾ってきたんですよ。それで、犬って何を食べるんだろうなって太子と閻魔が口論に……ん?」




油断は禁物。




「……太子…?」
「誤解!誤解でおま!た、助けて曽良!」
「すみません、不器用なもんで」

「不器用関係ねぇぇぇ!!」



―――――
2010,02,28

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