龕和編

□序章
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やぁやぁ、物語を愛読する諸君!
ようこそ、初めまして。
私の存在は物語。そぅ物語!
名前などない。
どうぞ物語のもんちゃんだのもーちゃんだの、君たちの想像で自由に呼んでくれたまえ。
擬人化しても結構。
擬人化の意味が分からない方はどうぞネットなりなんなり使って調べてみてくれたまえ。




そう、いまからお話する物語の世界も、君たちの世界のようにネットワークが行き交う情報社会が構成されており、君たちのように起きて食べて寝て衣食住を繰り返す種族"人間"が生きる世界だ。
ただ1つ違うのは、大昔のこと。
君たちの世界では大昔、人間という種族が産まれ生活する前では"恐竜"という種族が産まれ生活していたそうだね。
それが真実か否かは今もなお世界中で調査中らしいが、世間一般に知れ渡っている常識紛いな事だろう。


私が言いたいのは恐竜がいたかどうかの真実を問うているのではない。
その君たちが知っているその恐竜の存在がこの世界では"龍"ということなのだよ。


その昔、いまから話す物語の世界では人間の前に恐竜ではなく龍が住んでいた。
君たちの世界では龍は架空の存在らしいが、この世界では架空というより恐竜のように立証性が強い存在だ。
理由はもちろんある。いま人間たちの住まう土のはるか下から龍の骨が出てきたばかりではない。
かつて龍らが自然に使っていた能力の波長が、いまもなお大気に混じっているから!その大気との調和により、人間は龍らが使っていた能力を身につけられるから!!


そう!この世界では滅びたはずの龍らの力が未だに大気に混じり生きていて、人間はその大気と調和という名の契約を結ぶことにより、その大気に住まう龍の力を自在に操ることができる!
なんと素晴らしいっ!
私もこの世界にいたのならば…!!


…こほん、失礼。
物語の私故、つい物語の山場や重点的なところを話すとどうもテンションが抑えられなくてね。


そんなことはさておき。


大気と調和が成功し、龍の力を備えられた人間を、この世界では龍人(りゅうじん)と呼ぶらしい。
龍人は決して多くの者がなれる存在ではない。人間と龍とでは体の構造上か精神力の違いか、人間ではなかなか能力を操れることが難しいらしくてね。
そのため龍人といえど龍のようにありとあらゆる力を操ることはできない。
調和する際、その大気に最も濃く、その人間が最も相性の合う一種の能力しか操れないのだ。
そしてもしも相性が合わなかった場合、調和が失敗してしまう者も少なくない。失敗した者の行方?
それは…物語を読んでいけばわかるだろう。


なにっ!?まだ物語は始まらないのか?序章が長すぎる?
そんな文句を言わないでくれ。
私にも出番が欲しいのだから。
物語が始まってしまっては私の出番はないのだからね。
なにっ!?私の出番はどうでもいいから早く物語を始めろだとっ!!
なんて切羽詰まった人間なのだろう。
いいだろう。そこまで言うなら序章を飛ばして第一章一節目から読むがいい。
私の話を聞かないで物語を読み進めると訳が分からなくなるのだぞっ、忠告してやったからなっ、それでも飛ばして読むやつなんか知らないんだからねっ!!




…こほん、失礼。
さて、まだまだ私の話を聞いてくれる諸君。
素晴らしい。君はなんて心温かな人間なんだろう。しばしそのまま、もう少しのお付き合いを。



こほん、えー、そんな龍人と人間が住む世界が今から話す物語の世界の住人らだ。
彼等は共存して生きていこうと日々努力している。が、争いは耐えない。なぜ争うのか。それは力の差があるから。龍人は能力が使えるが、調和を望まないただの人間は勿論能力など使えない。そのため人間は武器を作り出し対抗する。彼等は一度もめ事や争いを起こすとその復習に復習を重ね幾度も終わらない争いをしてしまう。
君たちの世界と同じだ。
憎しみに憎しみが重なり戦争は絶えずどこかで起こっている。それと同じ。
龍人と人間との争いは絶えずどこかで起こっていた。
そんな終わりの見えない悲惨な年月が続く頃、あまりにもの被害と悲しみに、人間も龍人もようやく争いをなくし平和に共存して生きていこうという志を持つようになった。

感動的。
なんて素晴らしい世界平和!!
が、しかし、その争いの終止符が打とうとしている時にだ。とんでもない事態が起こり、世界は予想だにしなかった方向へ傾く。


突然のことだった。
小国の戦争がまだ終わっていなかったとき。
大国では世界平和を結ぼうと議会しているとき。
それは起こった。


そう…なんの神のいたずらか、全能なる能力を持った龍人が…誕生してしまったのだ。


そしてその力で、龍人は小国ひとつをたった数時間でまるまる滅ぼした。
あとかたもなく。
人間も龍人も建物も獣も虫も木々も全て。なんの害もないものも全て…。
たった1人の全能なる龍人は、その小国をなにもない小国へ変えて別の国へ逃亡した。
世界中の者がただ呆然となる。
そして恐怖した。
今なおその全能なる龍人は、この世界のどこかにいる。
もしかしたらすぐ近くにいるのかもしれない。
もしも彼を怒らせたら?
もしも彼をだれかが僕にしたら?
もしも彼が再び災厄を招いたら?
世界中の者が、早く彼を見つけ捕まえ始末されて欲しいと願った。
そして今、各国では組織や軍人を作り、全能なる龍人を探し求めている。
世界平和の為に…。



さぁさあ、お待たせ。
ここからが物語の始まりだ。
全能なる龍人と世界が巻き起こす、愛しくも儚い壮絶な物語…。
最後に選ぶのは愛か死か。
 

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