桜蘭高校ホスト部【完】

□うさぎのぬいぐるみ
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「それじゃあ、失礼します」


鏡ちゃんが去っていって、僕は一人、手の中のぬいぐるみを見つめていた。



「他には何かないのかな」



紙袋をひっくり返してみる。
すると、一通の手紙が落ちてきた。



手紙!?!?



落ち着く暇もなく、封を切る。
慌てすぎたせいで、封の部分はところどころ破れかぶれになっていた。


そして、それは少し分厚い。
僕は急いで手紙を開いて、目を通した。



桜に縁取られた便箋からは、ほのかに甘い香りがして、枚数をかさねるごとに香りが強くなっていく気がした。



『ハニー先輩!』



便箋を置き、改めて桜の懐中時計を手にする。
本物の金で出来てるのかな?



ずっしりと、確かな重量感がある。



『真綾の宝物を置いていきます。
ハニー先輩なら、きっと大事にしてくれると信じていいですよね?』

「うん、任せてよ」



懐中時計を包む僕の手元を見つめながら真綾はふんわりと笑った。
そして、一度瞬きしてしまえば、その姿は消えてしまう。



サァァァ



いつの間に窓開いてたんだろう?
冷たい風が駆け抜けて、病室の花と僕の髪、ウサギの耳を揺らした。
便箋がベッドの上で散らばる。



それを一枚一枚丁寧に拾い上げながら、僕は窓辺に立った。



ひんやりとした風が、容赦なく襲いかかってくる。
目の前の木は、葉っぱがほとんど散ってしまって、数えられるほどにしか残っていなかった。



もうすぐ冬だ。
寂しい冬がやってくるんだ。



僕は、手に持ったままの懐中時計を強く握りしめて、空を見上げていた。
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