信じてるから
□飛び降りて
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「向日葵、あの、俺……」
「えと……どうしたの?」
夕陽の教室で、二人きり。
朝、メールで
『放課後
教室で待ってて』
そう送られて、待っていたら、この通り。
うん、なんていうか、この状況が何を意味するのかわからないほど、私はバカじゃない。
だけど、自分からそれを確かめるには、恥ずかしいから、なにもわからないふりして先を促す。
「あのさ、俺……」
「うん……」
目の前の彼が、思い切ったように顔をあげて、私を見た。
視線が絡み合う。
「向日葵が好きだ!
だから、付き合ってほしいっ」
頬を真っ赤に上気させた彼の目は真剣そのもので、私もそれに真剣に答えなきゃいけないんだと、腹をくくる。
一度床に落とした視線を再び彼にあわせて、苦笑い。
「ごめんなさい」
夕陽の教室だなんて少女漫画定番の場所を指定してきた彼は、それこそ定番通り、「理由、聞いてもいい?」と言ってきた。
泣きそうなのを堪えながら、それでも私にそれを悟らせまいと、作り物の笑みを携えたまま。
そんな顔しないで。
その顔、私苦手なのに。
「夢があるの」
「え?」
拍子抜けした顔をする彼。
よかった。作り笑いが消えて。
少し、緊張がほどける。
とりあえず、何か言われる前に先手をうたなきゃ。
そういうわけで。
「それがなにかはいえないけど、私にとっては憧れで、大切なことなの。
だから……」
ごめんなさい。
そう言って、頭を下げた。