席が近くになって
□メールと自己紹介
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「……l…o…l…o」
それからpi、pi、piと数字を打ち、最後に定型文から@以降のアドレスを打つ。
文面は先に仕上がっているので、あとは送信ボタンを押すだけ。
押すだけなのだが……。
「……やっぱ怖いなぁ」
誰もいないバス停で、一人携帯を眺めて呟いた。
部活も終わって、あとは家に帰るだけ。
バスが来るにはまだ時間があるからというわけで、愛菜はメールを作った。
アドレスも打ち込んだし、あとは送信するだけ。
なのに、勇気がだせない。
ボタンを押してはキャンセルして。
また送信ボタンを押しては、キャンセルボタンを押すの繰り返し。
「焦れったいなぁ」
「ひゃあ!?」
耳元で聞こえた声に悲鳴が上がる。
焦って振り向けば、見知った顔だった。