席が近くになって
□思いもよらない
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パチッ
なんの前触れもなく、唐突に目覚める。
これでも、寝起きがいい自信はあるのだ。
「ん〜、くぁう」
あくびを一つもらし、布団からもぞもぞと起き出した。
部屋をでて、フラフラする足下に気をつけながら階段を降りる。
「おはよう、愛菜」
「おはよ……」
リビングを通れば、ビシッとスーツ姿のお母さんとすれ違った。
今日も仕事なのかな。
そんなことを考えつつ台所へ。
寝起きはいい。
でも、だからといって、すぐ行動できるかといったらそうじゃないんだよね。
思考回路は単調だし、声はあまり出ないし。
ようは体だけ起きているみたいな、そんなカンジ。
そういうわけで、愛菜はお母さんとの会話もそこそこにして、冷蔵庫から水のペットボトルを取り出した。
「愛菜、今日は母さん残業だから」
「うん……」
すれ違い様に、パタパタと部屋を往復しながらお母さんは言った。
「お昼は自分で。朝ごはんは、パンもご飯も両方あるから好きなの食べなさい」
「ふぁい……」
あくびがまたでた。
うー、体もまだ起きてないのかなぁ。