桜蘭高校ホスト部【完】

□ボクと君と僕と
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『悪いが、子供だからと言って甘やかされるほど、この世界は甘くないんだ』



わかるな?と言って、こちらをみずに、おじさんは進む。



『はい・・・』



真綾は手のひらにある黒いものを持ち直して、しっかり、おじさんのそばを歩く。



『相手がだれであっても、遠慮なんかしちゃならねぇ』

『は・・・い』

『それがたとえ、お前の大切な人でもな』



もう、言葉を出すのが嫌になって、うなずくだけにしたら、叩かれた。
パシンと、乾いた音が廊下に響く。



『返事はちゃんとしろ』

『ごめんなさい・・・』

『来い』

『はい・・・』



真っ暗い廊下を進んで、進んで、たどり着いたのは扉。
ここを開いたら、もう、そこは、普通の世界じゃないんだ。
真綾は、もう、普通の人じゃないと、実感しなくてはいけなくなるんだ。



それが怖くて、動けなくなってしまった真綾の頭を持って、おじさんは、真綾を扉にたたきつけた。



『いい加減にしろ』



腹ァくくれ、って。
顔から真正面にぶつかって、声も出せず、痛さに耐える。
すごく痛い、痛いよ。



『泣くなよ』



だけど、自分が悪いから、悪いことしたのは自分だから。
頭を話してもらって、目頭にたまる雫をぬぐう。
絶対、泣かない。
泣いたら、だめなんだから。



一生懸命歯を食いしばって前を向く。
手のひらの黒いものをしっかり握って、前を見据えて、姿勢を正して。
おじさんは真綾のその様子を見て、満足そうにうなずいた。
そして、扉が開かれる。
いや、開かれた。








「真綾!真綾!!
 トオルどうしよう!真綾泣いてル!」

「はぁ!?嘘だろ!?」



忘れちゃいけなかった。
忘れることで、真綾は楽していたんだ.



「おい、真綾、大丈夫か?」

「真綾、真綾」

「・・・・・・」



ぎゅうって、両手が大きな手に包まれて、条件反射で握り返す。
それはぽかぽかと暖かくて、ぬくもりが伝わってくる。
大丈夫、思い出したから。



「ミケ、徹・・・」

「「真綾・・・」」




二人の手を強く握りしめる。
真綾ね、思い出したよ。
とっても大切なこと。










1...仕事とられた!?

2...約束の日

3...君は僕の・・・

4...私の居場所
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