桜蘭高校ホスト部【完】

□表の世界と裏の世界
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『ったくよォ。
よくやるぜ、あの二人』



深いため息をつきながら、手元の借用書に視線を落とす。
借用額、保証人、そういうものは全てすっとばして、注目すべきは一番下の項目。


担保:比嘉  真綾(娘)



『まだ乳臭ぇガキじゃねぇか』



借金三億円越えを残して、消えた夫婦が残していったのは、中学生になって間もないガキんちょ。

人目を引くその容姿と、雰囲気は、売り物として使えそうだが、いかんせん、年齢があまりにも……な。
せめて、高校生とかなら良かったのに。

再びため息をついて、俺は目の前のガキと向かい合った。



『しかも、壊れてるときた』



前髪をがっしり掴み、持ち上げても、ガキは瞬き一つせず、虚ろな目でどこを見てるかもわかりゃあしねぇ。



『なぁ、聞こえてるか?』



声をかけたところで全くの無反応。
ったくよぉ。
俺はこういう面倒なのは嫌いなんだ。



『ちっ』



腕を一振りして、ガキを投げ飛ばす。



『っあ!!』



ガッシャン!!!
家具は全て持ち運ばれたため、ガキの体は何にも邪魔されず、まっすぐ壁にぶつかっていった。
そして、ガキは横になったまま動かなくなる。



『声出せるじゃねぇか』



俺はゆっくり、わざとらしく足音をたてながらガキに近づいていく。



『あのなぁ、俺も暇じゃねぇんだ。
さっさと話をつけさせろや』



タバコを取り出し、口に加えた。
あぁ、うめぇ。



『てめぇがどんな気持ちだろうが、俺達にゃ関係ねぇんだよ』



運がなかったんだよ。
あきらめな。



俺のその言葉にガキの体がピクッと反応する。



『おっ?
やっと話する気になったか』



顔を近付けて煙を吹き付けた。
ガキの顔が煙で隠れる。



『それじゃあ話をつけようぜぃ?』



ガキの返事を待つ。
さぁ、いい加減反応しろよ?
じゃなきゃ……、そろそろ俺も我慢の限界だ。

タイムリミットは煙が晴れるまで。

生か死か。


あとはお前次第だよガキんちょ。



そして、煙は晴れた。




第七章:表の世界と裏の世界

いつまでも平和で、だなんて。
夢を見すぎだったのかな。
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