桜蘭高校ホスト部【完】

□そして桜は咲き誇る
1ページ/1ページ




「あと、他に頼まれていたものは・・・」

「コーヒー」

「あ、そっか!
 忘れてたよ」



人ごみの間を縫って歩く。
崇の両腕には、大きな紙袋が三つほど。
僕自身は大きな紙袋を一つ、だ。



「ここら辺にコーヒー売ってるところってあったっけ?」

「どこかのカフェで手に入ると思うが」

「そっか」



じゃあ、ここにしよう。
そう言って、近くのカフェを指した。


横には張り紙が出ていて、『new open』と書かれている。
子供づれや、カップル、年配の方々とか年齢層は幅広かった。



「売ってるかな?」

「アメリカだからな」

「売ってるね、きっと」



ちょっと持っててもらえる?と、紙袋を崇に預けて、僕は扉を押した。




チリリン♪


チャイムの音が鳴って、扉を閉める。

僕は少しだけあたりを見回した後、近くを歩いていたウェイターを捕まえて尋ねる。




「Can I get any coffee here?(ここでコーヒーは買えますか?)」


「It has sold out just now.(ついさっき売り切れてしまったの)」



今従業員が取りに行ってるのでしばらく待っててくれる?
その間、お茶でもどう?と勧められて断った。



カウンターそばのケーキを眺めながら待つ。
珍しい。
アメリカに来て、いろいろなケーキやクッキーを見てきたけれど、こんなに着色料が使われていないお菓子は久しぶりだ。

まぁ、日本に比べるとまだまだ甘そうだけど。



「Io La tenni aspettando!!
 Venne come caffè.! 」

「・・・イタリア語??」



顔をあげて声のする方を向いた。



「You speak Italian again.(あなたまたイタリア語話してるわよ?)」



さっきの店員が笑いながら注意している。



「あ。
 sorry!I've miss take!
well I bring coffee,so I'll arranges on a shelf. (ごめんなさい!まちがえちゃいました!!
えと、私コーヒー持ってきたんで、棚に並べてきますね)」



『あ』って日本人か。
ここからじゃ顔は見えない。
長いウェーブのかかった栗色の髪が腰のあたりでゆらゆらと揺れている。
これにリボンが付いていたら、僕も懐かしい顔を思い出すのにな。


ふっと、口元をあげて、僕はショーウィンドウに視線を戻した。



「Wait just for a moment.

The visitor there want to it.(ちょっと待って。あそこのお客がコーヒーほしいらしいの)」

「Ok!(わかりました!)」



足音が近づき、そして止まる。



「Excuseme are you customer who want to cof...(失礼します、コーヒをお求めのお客様です・・・)」



どさっ

重たい何かが落ちる音がした。



「??」



何が起きたんだろうと振り返る。
そして、僕も絶句する。



「せん、ぱい??」



目を見開いて、恐る恐る言う声は、聞き覚えのある声だった。



「ハニー先輩、ですよね??」

「君は・・・」



彼女の視線が、胸元のチェーンに落ちているのがわかったので、服の下に隠していた懐中時計を取り出す。
桜の模様はきらめきを持って自己主張していた。



「今度は逃がしてあげないよ」

「っ!!」



彼女は瞳の端に涙をためて、僕に抱きついてきた。
あぁ、やっと会えた。



そしてまた、僕たちに春が来た。



end...
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ