桜蘭高校ホスト部【完】

□花の高校生
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かぽーん。
さらさらさら


和風のお屋敷。
時折聞こえる野太い掛け声。
真綾はそおっと瞳を開け、手元のお茶をゆっくりとすする。



『・・・。』



透き通った空気。
時折聞こえる意気込んだ掛け声。

ことっ。

丁寧に入れ物を置き、頭をさげる。



『お粗末さまでした。』

「ほぅ・・・。」



各方面から息をのむ声が聞こえる。
しかし、誰一人として声をかけるようなことはしない。
あくまで、見ているだけなのだ。



「わぁー。
 真綾ちゃんすごいねぇ!」



その沈黙がようやく破られる。



「これならいいよね、親父?」

「むむむむむー・・・。」

『あの、そこまで迷惑なら真綾一生かかってでもなんとかお金作って借金返しますから、気にしないでください。』

「一生かかっても返せないと思うけどなぁー。
 9800万円。
 あと、1800万円も別で残ってるんだっけ?」

『んぐっ・・・!』

「光邦、あまり本当のことを言い過ぎるな。
 だいたい、本当はホスト部で働きさえすればすむ話だったはずだ。」

「だって、春也が親父に言っちゃってたんだもん。
 ”9800万円なんて大金そんな簡単に捨てられるものだと思うな”って。
 僕は別に平日働いてくれればよかったんだけどね。」



(そうだよね。
 そんな簡単にこんな大金、部活をやるだけで許してもらえるなんて思った真綾が馬鹿でした。)



「でもさ、よく考えたらいい話だと思わない?
 この家、ちょうどお手伝いさんを募集してたところだしさ。
 自給いくらだっけ?
 そこらのバイトするなんかよりは高かった気がするんだけどねぇ。
 崇、知ってる?」

「・・・。
 1300円〜だそうだ。」

『どうか、このふつつかものを雇ってやってください。
 屋敷の掃除、道場の掃除、食事のご用意、道場着の洗濯。
 どんな仕事もこなして見せます!
 もし必要なら、大切な御子息の身の回りのお世話や護衛だってお任せくださいっ!!
 あ・・・、できればこの人以外で。』



すちゃっ
たたずまいを素早く直し、額を畳につけ、頼み込む。



「真綾ちゃん、どうして僕以外なの?
 別に僕でいいじゃん。
 ってゆーか、他にご子息誰がいるって言うの?」

『い、いるかもしれないじゃないですか!?
 もしかしたら!!』

「まぁ、いることはいるけど、断りそうだよね。」

「あぁ、断るだろうな。
 あいつなら間違いなく。」

『うっ・・・。』

「ね、親父、どうかな?
 いい子だと思うよー、僕は。」

「銛ノ塚君はどうかね?」

「光邦がいいというのなら・・・。」

「うーmmmm・・・。
 屋敷の手伝いは一応足りてるし、道場を掃除するといっても、ここは男ばかりだしなァ。
 第一ここは力を鍛える場所だし・・・。」

「あ、そうだ!
 親父、いいこと思いついたよっ!
 この子すっごく強いんだよっ!
 だからね、試しに埴ノ塚流で戦ってみてよっ!
 そしたら、きっとこの子のこと認めるでしょ??」

『「え。」』

(こんないかついおじさんと戦えと??)

「なにをいう光邦!
 こんな、こんな華奢な女の子と戦うなど・・・!」

「でも、僕、その子に気絶させられちゃったんだけど・・・。」

「よぉーし、確か君、真綾といったっけ??
 私と一度手合わせ願おうか。」

『あの、なんでしょうか、その態度の変わりよう。
 それと、真綾が勝ったら何かあるんですか?
 この勝負、なんの利益もないなら遠慮させていただきたいのですが・・・。』

「大丈夫大丈夫!
 親父、武術馬鹿だから手加減なんてできないからさ、親父に勝てたらこの道場の人たちみんなに認めてもらえるんだよー。
 だからね、真綾ちゃん、ここで働くための第一の関門みたいな?」

『でも、そんな無理して働かなくたって・・・。』

「自給1300円だ、真綾。」

『さぁー!
 どっからでもかかってきてください、ご主人!!』

「「「「「「(((((変わり身早すぎるよっ!!!)))))」」」」」」




+++++


「真綾ちゃんって守銭奴だねー。」

「あぁ。」

「親父、大丈夫かな。
 真綾ちゃん、意外に力あるんだけど。」

「真綾が負けるとは思わないのか・・・?」

「ないないないない。」

「・・・?」

「一度戦ってみたらわかるよー。
 あ、そろそろ勝負着くんじゃないかな?」




どごんっ



「「「「師匠――――――!!!」」」」

『ふぅ。
 女の子相手に手加減ぐらいしてくださいよ。
 もう少しで本気出しかけちゃったじゃないですか。』

「ほら。」

「・・・。」
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