席が近くになって

□メールと自己紹介
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「さっさと送ればいいじゃん。
なに戸惑ってんの?」

「人の携帯勝手にみないでクダサイ」



携帯を背後から覗き込んでいた幼なじみを押し退ける。
野球部の格好をしたこの背の高い男子は中原 恭介。
明るくて、人気者で、小学校から野球一筋。クラスが一緒で、男の子と話せない愛菜をなにかと助けてくれるのだ。



「誰に送んの?
俺の知ってる人?」

「知らない人ー」

「ふーん?
初メ?」

「うん、初メー…」



再び携帯の画面を見て、恭介の顔をみて、また携帯をみる。
恭介は、光希くんがなに考えてるのか分かるかな。
そんな疑問が沸き上がる。



「え?どうかした?」

「んー。どうしよう」



じーっ、とみる愛菜を不思議そうに見る恭介。
聞いていいのかな。
わかんない。

わからなくて、首をかしげるばかり。



「あーっ、もう、送ればいいんじゃん?!
気張らずさー」

「あっ!」



恭介は愛菜がメールを送ることにまだ戸惑っているんだと思ったらしい。
言うが早いか、恭介は愛菜の手から素早く携帯を奪い取り、ボタンに指を走らせる。



「そーうしん♪」

「あぁー!!!!!!」



pi♪と音がして、携帯は閉じられた。
そして、恭介は愛菜の手が届かないように、携帯を高くあげる。



「か、返して返して!」

「んー、はいよー」



携帯ストラップの紐を使って携帯をぐるんと一回転させて、キャッチして。
それから恭介は携帯を返してくれた。



急いで携帯を開けば、画面は待ち受け。
さっ、と血の気が引く。



「おく…、おく…っ!」

「いやぁ、ものごとには踏ん切りが大事だよなー」



大丈夫、メールは見てないからよ!なんていう恭介の足を踏みつけてやる。



「いたっ!」

「バカ恭介!」
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