桜蘭高校ホスト部【完】

□有名な裏番長
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「ねー、真綾ー」



僕と光は、お弁当を食べながら、目の前で縫物をしている真綾をじっとみつめていた。



『んー?
 なぁーにー??』

「それ、なにしてんの??」

『編み物。』

「「それはみてわかるよ」」



くるくるプス。
シュ

手際良くどんどん手元の編み物が形作られていく。



『んー、なんだろうねぇー・・・』

「真綾ちゃん、お弁当食べないと、お昼終わっちゃうよ?」


若干上の空になっている真綾を自分の弁当を食べながら、ハルヒがやさしく諭すが、



『今日はお弁当うっちゃったから持ってないのー』

「「「また!?」」」



真綾はときどき、クラスの子に自分の弁当を売っているらしい。
手作りだから、ほしいという子がちらほらいるらしくって。
庶民弁当へのあこがれと、真綾が作ったっていうダブル効果が効いてるんだろうな。

そんなことを思いながら、真綾を非難する視線を向けるが、当の本人は気にするそぶりもなくのんびりしたものだ。



『また・・・??
 そうでもないよぉー。
 一昨日は食べたから―――――できたっ!!』



どう??と、出来上がったものを自慢げに見せつけられる。
丸い顔に茶髪の髪――――
かわいらしい人形がそこにあった。


「「僕の人形??」」

『どこからそうみえた!?
 違うよー』



僕たちの答えに一瞬目を見開いて、すぐに真綾はふにゃりと笑う。



『ハルちゃんはわかるんじゃないかな??
 格好とか、結構凝ったつもり!』

「んー・・・。
 あ!!!!!!!!」

「「なになに!?」」

『わかった!?』



期待をこめた視線を僕たちはハルヒに向ける。
僕たちに似ていると思ったのに、違うだなんて。
みるからに男の子の人形。
だれなのかと聞くのだから、実在しているんだろう。


誰なのか気になる。



「・・・徹君??」



ハルヒがそうつぶやいたと同時に、ぱぁあああと顔を輝かす真綾。



『正解正解!
 さっすがハルちゃんっ!!
 やっぱわかるよねぇ♪』

「うん。
 服装とかで・・・。すっごい細かいところまで作られてたから。
 今日何かの日だっけ??」

『うんっ!
 今日は徹のチームの結成日記念日なのっ!
 だからお祝いにみんなの人形作ったんだぁっ。
 徹だけがまだ完成してなくてね?』

「へぇー。
 今日だったんだ。
 あれができた日って」

『そだよー!
 だから今日はみんなでパーティなんだっ!』

「楽しそうだね」

『うんっ!!
 だから今日は真綾部活おやすみネ!!
 あ、薫、薫、それ残すんだったらちょーだーいっ』

「え??
 あ、うん別にかまわないけど」

『やたっ!
 いっただきまぁす♪』



ひょいっと、僕の手から割り箸をとりさり、それをつかって、ムニエルをかっさらう真綾。



『あー、やっぱおいしぃー!
 一仕事した後のごちそうは最高だよっ!』



『それに、普段の生活じゃ食べられない高級食材だし!』と一言おいて真綾は笑顔になる。
その様子を見て、なんだかこの間のこと思い出した。



「そういえば真綾って、この間レストランいったときすっごい興奮してたよね」

「あー、あれだろ??『わわわ!!なんですかこのキラキラした世界!?真綾が入っちゃっていいんですか!?入っていいの!?』だろ?」

「それに比べて、ハルヒは『わー、すごいですねー』の一言。
 同じ庶民でもここまで違いがあるとは・・・」



顔を見合わせてそれから、やれやれと、光と動作をハモらせて、二人に見せつける。
庶民にもいろいろいるんだねーって思ったよねーと、光と僕が声を合わせていうのに対しても、二人の反応は違う。



「余計な御世話だよ。」

『わ、忘れてくださいっ!!』



僕らの興味がわいたのって、ハルヒが久しぶりだと思ったけれど・・・
真綾も結構興味をわかせるよね。
なんて、そんなことを思う。



「でも、本当に二人とも支払いしないで済んでよかったね。
 まぁ、あんなチーム戦じゃ、二人のどっちかが損だもんね」

「鏡夜先輩のおかげだな!」

『はいっ!』



結局あの勝負は、僕たちが入っているハルヒチームが僅差で勝ったんだけど、鏡夜先輩が意外にも、



「確かに俺たちのチームは負けたが、しっかり売り上げを数えると、真綾のお菓子が一番売れているからな。
 真綾はお金払えないだろうし、今回は頑張ったご褒美ということで、俺が費用を持ってやる。」



とのこと。
あのときは、鏡夜先輩が、自分の得にもならないことをするなんて珍しいと思ったけど、
真綾のこんな笑顔がみられるなら、なんとなく自分の得にならなくたっていいかもって思う気持ち、分かんないでもないかもって思ったりするんだよね。
今ならだけど。
あれ、僕ってなんか真綾のこと結構気に入ってるのかな!?
え、ま、まさか!!



「そんなわけあるはずが―――」

『なにがそんなはずあるわけないの・・・??』

「わっ!?」



目の前に近づいていた真綾の顔に驚いて、椅子から転げ落ちそうになってしまった。
あっぶなぁー



「何やってんだよ薫ー」

「気をつけてね」

『薫大丈夫!?』



何この3人。
真綾しか僕をいたわろうって人はいないわけ!?
小さくため息がこぼれる。
まぁ、心配してほしいわけではないんだけどさ。
ひとまず、体制を整えて、真綾をみつめる。



『な、何??』

「近いよ真綾」

『え、真綾のせいっすか』

「当たり前じゃん!
 真綾が急に顔を近づけるからびっくりして落ちそうになったんだって!!」

『いや!?
 真綾ずっと薫の名前よんだからね!?
 ね!ハルちゃん、光!!』



突然話を振られた二人も、真綾の意見に同意して、コクコクうなずいてる。



「薫が突然反応しなくなるから、悪いんだよー」

「僕のせいかよ!」

『それで突然つぶやいたから、聞き返しただけなのになぁー』

「なんかごめんなさい」



まさか自分が逆に謝らされるとはおもわなかったよ。



「薫、何か考えごと?」

「いや、ちょっとね」



「ふーん」とだけ光は言って、それから、元気よく話題を変えた。



「そういやさ、その徹って何??
 チームとか」

『真綾の仲間!
 お仕事とか手伝ってくれるし、徹は相棒かな。
 あっちが表で、こっちが裏みたいな・・・?
 二人で一つなんだよ!』



うんうんと一人納得する真綾。
それに僕らがどう返事するかというと



「「意味わかんない」」

『うく・・・っ!』

「ごめん、自分もちょっと一瞬理解できなかったや」

『ハルちゃんまで!?』



がーん、と見るからに落ち込む真綾をハルヒがよしよしと背中をさすって慰めている。
なんかこの二人―――



「「姉妹みたいだよね」」

「え?」

『う?』



思いがけずハモった言葉に驚いて、光を見る。



「あ、光も思った?」

「薫も思った?」

「だって、仕草が・・・ねぇ?」

「あー・・・だなぁ」

「それで僕たちはそれを見守るお父さん?」

「わっ、薫それはないよ!
 そこはお兄さんでしょ俺たち?」

「あ、そっちのほうがなんかしっくり来る気がする」

「だろー?」

「「ってわけでどう??
  妹たち?」」

「えー、こんなお兄さんとかいらない」

『真綾のお兄ちゃんなら、両親と一緒に真綾を見捨てて一人どっかに行っちゃうなんてことしない?』

「「僕たちみたいなお兄さんがいたら絶対幸せだと思うけどなぁー。
  真綾の基準は何!?」」

「たぶん不幸にしかならない」

『この二人がお兄さんでも借金返すのに役立ちそうにないからいらない』



何この子たち――――!!!
ハルヒはばっさりだし、真綾の理由はもう論外な気がしてならない。



「あ。」

「どうしたの薫?」

「僕わかったかも」

「なにが?」

「真綾とハルヒの共通点」

「庶民なとこじゃないの?」

「『庶民ですみませんね!!』」

「そうじゃなくて、なんていうか―――」




一度言葉を区切ってから続ける。



「変に現実主義なところ?」



あとお金にがめついところも似ていると思うんだよね。
そういったとき、光は大笑い。
ハルヒと真綾の二人から何かいろいろと言われたのはいうまでもない。



(『そういえば、真綾とハルちゃんって、結局どっちがお姉ちゃんなの?
  やっぱ真綾がお姉ちゃんかな!』)
(「どうやったらそう思えるの。
  俺はぜってーハルヒのほうがお姉ちゃんだと思うね!」)
(「真綾はお姉ちゃんって感じしなよね」)
(『そ、そんな!?
  真綾頼れるお姉ちゃんじゃない!?』)
(「真綾はメンタル面が弱いからじゃないかな」)
(「「『ハル((ヒ))(ちゃん)が強すぎるんだよっ!!』」」)
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