桜蘭高校ホスト部【完】

□表の世界と裏の世界
2ページ/10ページ


1...



「なんの用ですか?」



抜け出そうと腕を捻ったり引っ張ったりしても、さすが斎藤さんです。
手首の骨が擦れてギシギシ鳴るだけで、まったく解放されそうにもありません。



「おいおい、さっき言っただろォ?
大人の話だよ、大人の話」



耳元で囁きかけられる低音ボイス。
体中、鳥肌が立って仕方がない。



「真綾はまだ子どもなんで出来ませんけど」



平常心を装って、笑顔で答える。
心の内を隠すなら、無表情か笑顔。
基本中の基本だ。



「まあ、ガキだよなァ。
相も変わらず、生意気なガキだ」

「そうですね」



お互いニコニコと顔を見合わせて、そして数秒の沈黙。



「んなわきゃねぇだろ」

「きゃっ!」



グググっ、と手首に力がかかり、脈が圧迫される。
ただ力を加えられるのとは訳が違う。



さすが裏の住人。
的確に急所をついてくる。



「や、めてください……」

「お前、いい加減、自分の立場を自覚しろよ。
次はこんなんで済ませねぇぞ」



なんて悪い顔なんだろう。
この人は、しばらく会わない間にさらに修行でも積んだというのだろうか。

ただでさえ悪かった人相が余計に悪くなっています。


「はい」



なんにせよ、真綾の立場を考えれば、そんなもの、ただの迷惑でしかないのだが。
沸き上がる怒りを押さえつけて、無表情を貼り付ける。

斎藤さんが会いに来るなんて、絶対ろくなことないもん。
そんな嫌な話は、さっさと終わらせるに限るよね?
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ