桜蘭高校ホスト部【完】
□さようなら
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「「ねぇねぇ、ちょっと聞いてよ!
大ニュースー!!」」
「ちょっと、光、馨!」
透達とカフェに行った次の日の放課後。
わだかまりを残しつつ、いろいろなことがありすぎて、混乱気味だった光邦と話はできないと判断したのだろう。
決意したら連絡をよこせ、とだけ言って、二人は去っていった。
『ねぇ、崇』
先に席を立った二人には目もくれず、光邦は、先程まで真綾のいたテーブルを見つめたまま、呟いたのだった。
『僕と真綾ちゃんは、知り合っちゃいけなかったのかな』
俺は奥側に座っていたから、光邦の表情は分からなかったが。
『真綾ちゃんがものすごく遠いよ、崇……』
俺は、声をかけることができなかった。
「モリ先輩は知ってました?」
「……ん?」
気がつけば目の前にハルヒの顔があった。
「聞いてました?」
「すまん、考えごとをしていた」
なんの話だろうと首を傾げる。
確か、冒頭で光と馨が大ニュース!だとか騒いでた気がする。
「真綾が学校を辞めて、イタリアに引っ越すって話です」
「なんでも、ミケーレのおじいちゃんが真綾を引き取ったらしいんだ!」
「ついでにミケーレもイタリアに帰るってさ。
なんだよ、あいつ」
いつの間にか光と馨も傍にやってきて、説明してくれる。
行動が早いな。
そう思わざるを得なかった。
「いや、知らなかった」
「「じゃあ、ハニー先輩は?」」
俺の返事を聞いた双子は、机にソファーで黙々とお菓子を食べていた光邦に話を振った。
「……知らない」
光邦はお菓子から顔を上げずに答えた。
光邦の声は単調で、いつもより低かった。
あぁ、タイミング悪い。
双子とハルヒは、驚いたように顔を見合わせる。
そして、声を潜めて、俺に聞いてきた。
「ハニー先輩、機嫌悪いんですか?」
「機嫌悪いというか、センチメンタルだな、これは」
「……」
「でしょう?
モリ先輩?」
メガネの端を光らせて、話かけてくる。
全く鏡夜は侮れない。
「多分」
「やっぱりか」
今度は環までやって来た。
「環、接客は?」
「勝手だが、お客様にはみんな帰ってもらった。
今日はそんな場合じゃないと思ったからな」
そう言ってハニー先輩を見る環。
「なにがあったんですか、ハニー先輩……」
ハルヒの言葉に、誰もが首を傾げる。
部員全てが、光邦のことを心配していた。