短編集
□俺様兄貴と大切な約束
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「さぁね。
それ言ったら、俺もお前の事好きになっておけばよかったのかもな。」
その言葉は何故か自嘲気味で
私は真直ぐ彰範を見つめた。
まだ、過去を引きずっているのだろうかと。
「彰範…」
「別にあのことを気にしてるわけじゃない。」
それだけ言うと
彰範は立ち上がり部屋を後にした。
きっと今は一人になりたいんだろう。
私はもう一度ため息をつくと胸元を押さえた。
本当に、なんで知博さんなんだろう。
なんでお兄ちゃんなんだろう。
もっと早く出会っていれば
こんなことになる前に出会っていれば
きっと変わっていたに違いない。
普通に手を繋いで
普通にキスをして
そして…
だけど
今の自分はなんなんだろう。
好きな気持ちを押し殺して
相手に好きだと言えなくて
止めてしまいたいと
終わらせてしまいたいと
願っていても
それすらも叶わない。
私…
どうしたらいいんだろう。