短編集
□俺様兄貴と生物教師
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「あのねぇ、彰範…」
「親父さん、再婚したんだろ?」
「え、あぁ、うん。」
せっかく忘れてたのに…
再婚の一言で知博さんのことを思い出した。
私は言葉を濁し、無意識に苦笑していた。
「うまくいってないのか?」
「…そうじゃないよ。
お義母さんのこと、好きだもん…。」
「兄貴も出来たんだろ?」
「っ……
うん。
すごくいいお兄ちゃんだよ…。」
イタイところを突かれた。
知博さんのこと…お兄ちゃんって呼ぶたびに、胸がぎゅーって締め付けられる。
こんなの酷すぎるよ。
好きな人とは絶対に結ばれることが無いだなんて…
「絵里子?」
不思議そうに彰範が私の顔を覗き込んだ。
だけど、私は顔を見られたくなくて
無理やり笑顔を作って
部屋に戻った。
「…何かあったってバレバレじゃんか。」
部屋に戻った後、彰範が呟いた声は私の耳には入ることが無かった。