短編集
□発展途上恋愛
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そう。
実は私は利玖の事が大好きだったりする。
きっと、奴が私の事を好きになるずっと前から。
利玖は小さい頃から剣道をやっていて、すでに有段者。
私が好きになったのは、そんな奴の朝稽古を見たときからだった。
誰も居ない道場で、一人もくもくと素振りをしてたあいつに一目惚れだったのだ。
普段は可愛いって言葉が合うのに
剣道をしている時は…すごく格好良かった。
多分、私はそのギャップにやられたのだ。
「今更…言えない。
それに…アイツいつも教室だよ!??
こんな大勢の前で“はい、喜んで!”なんて言えないでしょ!!」
「……。
ダメね。それじゃぁ、いつまで経っても幼馴染のままよ。」
ため息をつく彩夏。
そして鞄をもって立ち上がった。
縋るように見つめれば、彩夏はチラリとこちらを見つめ
きっつく言い放った。
「海が変わらなきゃ、良くて現状維持よ!」
それだけ言うと、彩夏は帰ってしまった。
分かってる。
だけど…
私は利玖みたいに
自分の気持ちを真直ぐにはぶつけられない。
恥ずかしいし。
それに…利玖と付き合ったら
利玖しか見えなくなってしまいそうで怖い。
付き合うのは良くても
分かれるのが怖い。