短編集
□泡沫の夢
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「どうしたの?」
彼女は真っ白な花畑から、コチラに走り寄ってきた。
「道に迷ったの?」
まだあどけない顔の彼女は真っ白な花を両手いっぱいに抱えていた。
俺はそんな君に見とれて何も言えなくなっていた。
少し長めの赤毛を二つに縛っていて、君が歩くたびに
風になびくように、揺れた。
「大丈夫?」
「ッ…!!」
頬に添えられた手にビクッと反応し
俺は呪縛が解けたみたいに、君の手を払いのけた。
「ご、ごめんなさいッ!!」
君は俺が怒ったと勘違いしたのか
手をすぐに引っ込め、一礼をすると俺の横を通り過ぎてその場を後にした。
後に残された俺は、そんな君の後姿をいつまでも見つめていた。
それが、俺と彼女の出会いだった。