あかいろのかぜ
□03.戸惑いと自覚
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戸惑いと自覚
「あの…」
俺は、心臓の音を耳で聞きながら、先輩に話しかけた。
先輩は、しばらく沈黙していたけど、強かった腕の力を緩めてくれた。
「わるい…」
「えっ」
そのまま先輩は俺の隣をすり抜けて、図書室を出て行ってしまった。
俺はぽかんとそこに立ちすくむことしかできなかった。
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俺は5限目のチャイムを聞いた後、図書室を出た。
その後ふらふらと教室に向かい、ぐったりと教室の戸をあけた。そんな俺を見つけるや否や昭島君が俺に駆け寄ってきた。
「まさき!」
「…昭島くん…」
「あの、なんか俺…ごめんな?気、悪くさせたか?あの…あいつらもそんな悪い奴らじゃないんだぜ?」
昭島君は、帰ってこなくて心配した、と最後に付け加えた。
「ごめんね…」
俺はそれどころじゃなくて、先輩のことばかり考えていた。
あの切ない声が、ずっと頭の中にある。
「でな、真崎いつまでも戻ってこねぇから、体育祭の種目、勝手にきめちまった!」
「たいいくさい?」
「そーだぞ!来月だろ?うちのクラス燃えてっから、超練習すっぞおおお!」
燃えてるのは、昭島君だけでは…
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体育祭までの練習の間、一度も先輩と会うことはなかった。
実際先輩のクラスとは違うチームだし(うちの学校は、各クラスを色分けして、各学年の同じ色をチームとする)会う必要もないはずだし、この間だって、偶然図書室で会っただけだし、特に次に会う約束など取り付けられたりはしなかった。
はっきり言って、変な感じだった。
ただ、あの数日間の先輩との時間はとても印象的で(いや、あんな種族の違う人間と一緒にいればそうなるんだろうけれど)、ふとした瞬間に俺は、先輩を思い出しては、恐怖とよくわからない感情がこみ上げるのだった。
「真崎ー赤ペンキ借りてきてー」
「おー」
アーチ制作担当のクラスメイトから、そういわれて、俺は教室を出た。
俺は廊下をぼんやりと、歩いていると、ふと窓の外に目立つ赤色。
どきりと胸がなった。
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