短編

□続・忘れてしまった
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「ああんっ…ああっ…あっ」

気持ちいいことはすきだ。
女は気持ちがよさそうに腰を揺らしている。光義はぼんやりと下からその姿を眺めていた。

がたん!

部屋のドアが少しだけ開いていて廊下がその隙間から見えた。
光義は首だけをそちらに向け、その隙間から見えたものに“ああ、またか”と思った。

「シロ…」
「あぁん!…はぁ… え?」

「……なんでもねぇ」


もう一度視線を戻せば、もうそこには廊下の壁しか見えなかった。
女は帰り、光義は先ほどの廊下で見た人物に電話をかける。

「どこいんの?」
なるべく焦ったように電話ごしに話しかけた。
ぼそりと聞こえたその声に、光義は心の中でため息を吐いた。

史郎。光義はシロと呼んでいる。
光義の恋人。性別は男だ。
別に女のように可愛く甘えるわけでもなく、たっぷりとやわらかい胸があるわけでもない。


――…しかし、自分の恋人である男。

きっかけは自分だ。
あの日は女にフラれて、イライラしていた。
幼馴染で家が隣の史郎の部屋にあがりこんで、不貞寝をした。
史郎は、勉強をしているとき光義には構わなかった。それが、心地よかった。
目を覚ませば、史郎が俺を覗き込んでいた。


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