短編
□てんしとあくまの話
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だから君は泣くのだろう
『ごめんなさい。ごめんなさい。許して』
俺は、屋敷の東屋の影でうずくまる小さな悪魔を見つけた。
身の丈よりもでかい―うっとおしい―羽を静かに広げて、その塊へと近づいた。
『悪魔』達は俺たちを殺す。
大半のものが弱い『天使』という存在は神を守り、敬愛する。
暴力を嫌うため、悪魔達に太刀打ち出来る者は少なかった。
「ここはお前の来るところじゃないぞ」
天国の端にある俺の屋敷は、まれに招かざる客が紛れ込む。
ぴくりと目の前の悪魔は体を揺らした。
ゆっくりと顔をあげたそいつを見て俺は驚いた。
ないて、いた。
「ご、めん」
そいつは、何度もごしごしとよれた服で涙を拭うために顔をこすりあげると、立ち上がった。
まるで俺には興味がないようで、そのまま横をすり抜けて、出ていこうとしていた。
だから思わず、
「きゃ、」
ぼろぼろと泣くこいつが、気になってしょうがない。
気がついたら、腕を掴んでいた。
「は、なして…!きたない…からぁ…!」
だからお前は泣くのか?
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