短編

□君に会いたい
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第一印象




俺のバイト先の向かいの服屋は、仲がいい大学の先輩が経営していて、ちょくちょく遊びに行ったり、買い物とかしに行って利用していた。

服の系統と先輩のセンスが俺好みだったからってのもある。

たまたまバイトが早く終わって、ふらりと店に立ち寄った。

加地先輩ーと、図々しく先輩を呼びつけると「おぅ」といつもどおり、そっ気ない返事が帰ってきて、ご機嫌で新作の服はないかと店内をぐるりと見回した。

すると、目の端に見慣れない男がいた。

服をたたんだりして、明らかに客ではない様子の男に俺は不躾な視線を送る。

それに気付いた先輩が「忘れてたわ」と紹介してくれたのがそいつだった。

名前は茅ヶ崎裕真。

かなり顔は整っていて、そこらへんのモデルですっていっても通じる。
主婦の奥さんとかがみたらキャーキャー言われそうな感じだ。

「はじめまして」

握手を求めてきた目の前の人物は、ここに―たとえば、女子高生とか、OLさんとかがいたなら、みな口をそろえて「すてき!」と言うであろう笑顔を向けた。

―…が、俺は身長差のため、裕真に見下ろされ、イラッときて初対面で蹴りをかました。

口より手がでる性格の俺。

これで大抵の人は俺をあまりよく思わない。
加地先輩は心が広いから…ってもしかしたら呆れて諦められてんのかもしれないけど…

腰をおさえる裕真に、はっとしてバツが悪くなったが、自分から謝るのは癪だった。

「こら、秋良!お、おま…だいじょうぶか茅ヶ崎」

加地さんも困らせているのに、俺はそっぽをむいて無視を決めこんだ。
お、おれの いじっぱり…!

「す、すみません…」



俺と…きっと加地さんも目の前の男が言ったことにびっくりしている。

そんな俺の目を捉えて、裕真はにこりと笑い、よろしくお願いしますと頭を下げた。

俺はその時、裕真が馬鹿真面目なのだと思った。






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