短編

□愛しいあのこ!
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side 真人

跳ねるボールに、青い芝生。弾ける汗。
これこそ青春!!
これこそ高校!!

サッカーは、素晴らしいっ

「はーいい汗かいたっ」
「お疲れ真人〜」
「うす」

友達と話す俺に別れの挨拶をしながら部室に戻る道を歩いていると、先輩や同級生がにやにやしながら帰ってゆく。

まったくお前も罪な男だよとか、彼が待ってるぞーとか言いながら。
彼?

…???

あ!

か、れ!



「ご、めん崇、待った?待ったよな」
「別に、いい」

俺は急いで汗臭いにおいをシャワーで落として、着替えを済ませ、ずっとグラウンドの隅で見学していたであろう恋人の所まで走った。

自分の目線よりずいぶんと高い位置にある目を合わせる。

俺達は男同士なのだが、崇が俺に「付き合ってくれ」って告白してきた。俺の学校は男子校で、そういう男同士で付き合っているのは珍しい訳じゃないので、特に驚きはしなかった。

ちびだし、平凡な俺のどこがいいのか分からないが、俺も崇のことは嫌いじゃないから、いいよ〜って返事した。
それから毎日必ず寮までの道を崇と帰っている。

「髪、濡れてる」
「うん、シャワー浴びたんだ!」
「風邪、ひく」

崇はいつでも心配症。

俺が木登りすれば、軽々登ってきて、俺を抱きかかえて飛び降りる。
俺がそれほど重くない荷物を持てば、奪ってでも持つ。
外出するときはかならず車道側を歩いたりする。

なんだかなぁ?

「崇ぃ〜俺、崇の鞄もつ」
「…………………」
「あっばかにすんなよな!」

崇は俺に顔を崩して、みせた。

まるで嫌そうに。

だが、俺も男だ!
人に物をもたせるのは好きじゃない。

崇に持って貰えるのは、何だかうれしい気持ちにはなるのだが、それでも。

持ちたい。

持ってあげたい!

むむむ、と崇の鞄を睨んでいると、大きな手のひらが俺の頭を覆った。
そしてくしゃくしゃと、かき混ぜた。
「んわっ」
「まこの気持ち、嬉しい。すごく嬉しい」

俺は崇に頭を撫でられるのがすごく好きだ。だから、嬉しくて、さっきのいらいらもどこへやら、にやにやしながら崇の顔を見上げ、崇の鞄に手を伸ばした。

その途端、崇は「でもだめ」と付け加えた。

「なんで?」
「鞄もつのは、俺の役目。だから、いい。」
「意味わかんない!」
「わからない、いい」

いや!よくないよ!!

「ふ、かわいい」

「ん?何か言った?」
「言ってない。まこ、帰ったら、明日の小テスト勉強」
「え〜」
「まこ…この間、30点…ひどい」

正論を言う崇にしょぼんとして、俺は素直に従おうと思う。

「崇、いい点とったらご褒美くれる?」

そういうと、ふわりと柔らかい笑顔をくれて、またくしゃりと髪をかき混ぜてくれる。

俺に甘い崇。

その笑顔は、まるで大型犬のかわいさ。


おれの大切でかわいくて愛しいあの子!




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